| 武田 |
直根が大切だということに気づいたきっかけは。 |
| 山寺 |
自然の現象とはどういうものか、自然とはどういうものか―ということです。傾斜になった時に根はどのように伸びるか、堅い土の場合はどうかなどを研究しているうちに、根の自然本来の姿とは一体どういう姿か―ということを追求しました。気づいたことは、植えたものは自然本来の姿にならない、ということです。そこから、より詳しい研究を始めました。昭和40年代のことでした。 |
| 武田 |
その時、植林された日本の山の不自然さにも気づいて―。 |
| 山寺 |
それはずっと後になってからですね。山の急斜面にも植物は生えています。それは落ちたり倒れてきたりしない。例えば、道路を作って、法面に植物を育てようと思うと、穴を掘って植えても崩れやすい。でも、天然のものは急斜面でも崩れない。どこが違うのだろう、というところからでした。天然、実生で生えてきたものは崩れない、植えたものは崩れる―。そこで、根を比較したところ、違いは根にあったということです。 |
| 武田 |
保育ブロックは。 |
| 山寺 |
保育ブロックそのものは4年ほど前からですが、根がどちらの方向に向かうか―という研究は、ずっと重ねてきました。土の中で根の誘導をする実験をしてみると、植えたものだとなかなか誘導できませんが、種から育てていくと、根の誘導が非常にうまくいくことがわかりました。 |
| 武田 |
どうしてでしょうか―。 |
| 山寺 |
植物が伸びる―ということは、基本的には空気があるということ。そして、水があるということ。この2つがあれば伸びていきますが、もう一つの条件に重力というのがあるんですね。水と空気があっても、上には伸びません。重力の方向に伸びる、ということがとても重要です。私たち人間が、こうして座っているのも重力があるから、重力を感じる細胞があるからですね。 |
| 宮崎 |
少ない水分でも、植物が育つ期間にあればいいわけです。それに応じた根の広がりになっていきます。植物は秋になると眠りに入ります。その時期からは雨は必要なくなります。私たちが、それを少し助けてやればいい―ということになります。 |
| 武田 |
今年7月の豪雨災害で、特に感じたことは。 |
| 山寺 |
天然林には直根があります。植林した林には直根が無い。それから、天然林は隣の木と根が交わり合うネット構造が非常に多いですが、植林した林には少ないです。ですから、この直根とネット構造がある林、森を作っていくことが大切だと思います。 |
| 武田 |
日本では直根が育つような植林は。 |
| 山寺 |
これまでは全くありません。でも、私たちはそれに気づいて、直根をいかに発達させるかという技術を開発して試験しています。まだあまり知られていませんが、やろうと思えばすぐにでも出来る方法です。まず、直根が必要である―という重要性を理解することからですね。その方法である保育ブロックをこれから普及していけたらと思います。 |
| 武田 |
今回の辰野町での災害現場のような災害が起こりやすい土壌というのは、日本各地にあると思っていいですか。 |
| 宮崎 |
そうです。かなり多くの人が、そういう場所に住んでいますし、公共施設も同じです。 |
| 武田 |
これを未然に防ぐことは困難―。 |
| 宮崎 |
まず、こういうことが起こり得るんだという認識をすること。それから、災害を防ぐより確実な方法、最悪な場合に避難する方法を考えていくことだと思います。よく言われる言葉ですが、ハードな対策とソフトな対策とのせめぎあいの中で、今取れる方法を提案していくことが大事だと思いますね。 |
| 武田 |
例えば、家を建て替える時に、危険な場所からなるべく離れるという思想も大事になってきますね。 |
| 宮崎 |
そう思います。2年前に砂防に関する法律が変わって、危険な場所を周知することや、そこに新しい建物を建てることを認めない、現在あるものを移転する場合には補助金を出すことができる―などが決められました。でも、ほとんどの人が知りませんし、その適用を受けていませんから、ハードとソフトの対策が合わせて取られていくことがさらに重要になりますね。 |
| 武田 |
例えば、直根が伸びやすい保育ブロックを作った場合、成長の率は。 |
| 山寺 |
木が大きくなる率というより、根が伸びるスピードが速くなりますし、深いところまで伸びるということです。木の根というのは、辰野町赤羽の災害現場のような土壌でしたら、1年で1bぐらい伸びます。ですから、それを途中でカットしたような根は、何十年経っても、80aぐらいしか伸びていません。いかに速く地中深くまで伸ばすか、そこがポイントですね。保育ブロックだとそれが出来る―ということです。 |
| 宮崎 |
ソフトな対策の中へそういう考えを入れて取り組んでいくということですね。そして、現在ある森林の間伐を強めに進めて、その空いた場所に直根が伸びる方法で追加していくと、全体として木材の生産をしながら、かつ安全な森林という意味合いを持たせることができるのではないか、と思います。 |
| 山寺 |
直根を伸ばすと、寿命が長くなり、成長量が良くなって大きくなります。勢いがいいですから、炭酸ガスの吸収量が多くなります。環境改善力が高まる、ということですね。そして、直根が伸びていますから、山地の保全力も高まるということです。そうした総合したメリットがあります。 |
| 武田 |
これから、そうした総合的に環境改善できる方法を、もっと提案していきたいですね。 |