| 武田 |
今回の災害でわかったことは。 |
| 山寺 |
病気と同じで災害は弱いところに被害が出るんですね。原因は2つあります。一つは地質。もう一つは森林。その2つが弱かったことが重なって、今回の災害は起きています。 |
| 宮崎 |
誘引となった雨の量が、250年から300年に一度かどうかという大雨だったということがありました。それが一番作用したと思いますが、すべての山、谷が移動したのではなくて、何か弱点があって、境界ぎりぎりのところで、崩れたところと崩れなかったところが際立ったと思いますね。 |
| 山寺 |
今回この赤羽の災害で流れた土砂の高さは3b以上ありました。ここは5軒が土砂に流されましたが、東向きの日当たりのいい場所ですから、まさかこうした災害に遭うとは思っていなかった場所だと思います。 |
| 武田 |
この傾斜は、災害が起きやすい傾斜ですか。 |
| 宮崎 |
傾斜としては10度程度ですから、緩い傾斜です。この勾配ですと、通常は土砂の流出を起こさない傾斜で、逆に動いた土砂が止まるぐらいの場所です。今回は、泥と水が移動したので、止まる要素がなくて下まで流れてしまいました。 |
| 武田 |
今は流れてしまってありませんが、災害前は木が生えていたはず。 |
| 宮崎 |
植林した47生のカラマツがあった場所です。柔らかい土の上にカラマツの重しをしたような条件だったと考えることもできます。 |
| 武田 |
こうした場所が危険だという予知は難しいでしょうか。 |
| 山寺 |
今までは、あまり着目されてきませんでしたが、今回の災害で、今後は着目されるべきところだと思います。 |
| 武田 |
この赤羽の災害現場の土壌の特徴は…。 |
| 宮崎 |
古い時代に火山で噴出したギョウカイカクレキガン(凝灰角礫岩)と呼ばれるものがここにあります。それが最初に風化した部分が、粘土になってしまい、水を通しにくくなっている。その上に信州ローム層と呼ばれる土が乗っていました。信州ローム層は、水をたくさん蓄える性質があります。それが、植物の成長には必要ですが、限界を超えて吸湿すると、土が泥になって液体のようになる性質があります。今回は、そういう状況が起きたのではないかと思います。それが、今回の災害現場のすべての場所に共通した特徴です。 |
| 山寺 |
今回流れた場所の土壌の厚さは2〜3bありますが、その中に根が入るか入らないか―ということが非常に重要なことです。植えたものというのは、その厚さの中には根が入らない。天然に播種されたものは、根が入ります。それは、重力の方向に伸びる直根が失われないからですね。植えたものは、直根を切ってしまいますから、直根の性質が失われて、土の中に入っていきません。この赤羽の災害現場がなぜ崩れたかを追求すると、弱い地質と弱い森林。この2つを合わせて考えていかなければなりません。この現場の周囲には強い森林があります。そこは崩れていません。強い森林とは、根に鍵があるわけです。根が肝心なんですね。 |
| 武田 |
このアカマツには立派な直根が伸びていますね。 |
| 山寺 |
そうです。地球の重力の方向にしっかり伸びていっています。この根が失われると山は崩れます。(写真〓山寺さんの両手の上付近まで土があった)このアカマツは天然のものです。このように天然だと直根が発達します。このアカマツから下には、カラマツが植えてありました。2b以上の土壌がありますが、植えられていたカラマツの根は80aのところまでしか伸びていませんでした。ですから、土の上を滑っていってしまったということです。 |
| 武田 |
植えた木は、どうして直根が伸びないのでしょうか。 |
| 山寺 |
直根の先に重力を感じる細胞があります。その細胞を切ってしまうと、重力を感じなくなります。そして、それを補うために小さな根がたくさん出ます。すると、活着率は良くなりますが、根は横に伸びていきます。すると、よけいに土の上を滑る力を抑えることができなくなってしまいます。 |
| 武田 |
そうしたことは、昔からわかっていたことですか。 |
| 山寺 |
最近のことですね。緑であれば、それが自然なことだと思われてきましたから―。ところが、根を調べてみると、不自然だったということです。不自然なものを作ると、自然の中では長生きできません。できるだけ自然に近い状態を作っていかなければなりません。戦後、日本中に展開された造林に非常に反省が求められる点だと思います。直根が発達している木は土壌の保全力が高いですから、山崩れになりにくいです。 |
| 武田 |
重力を感じる細胞を切らず、直根を伸ばすことを考えた植林というのは、日本ではまだ、あまりおこなわれていない―。 |
| 山寺 |
そこまで考えている人はまだ少ないですね。これからは、強い森林を作っていかなければなりません。例えば、この現場にあるアカマツは、幹の7〜8割もの太さがあります。これが本来の自然な姿です。 |
| 宮崎 |
私たちが、こうした現象の根幹を理解すれば、次にどうしたらいいかということが見えてくるはずですね。 |
| 山寺 |
今回の災害で直根がしっかりした強い山づくりについて実証されたと思います。この強い林を作る方法を、これから提案していきたいと考えています。被害を受ける側を強くすること、体を強くして健康になることが大事ですね。 |