2006年8月12日放送 

山田屋製粉所 山浦初枝さん 山浦政喜さん

昔ながらの知恵と技でおいしさを

大正10年創業 山田屋製粉所

「製粉」と聞いて何を連想するだろうか。現代では、郊外などで見かけるコイン精米機しか知らない人も多くなっているだろう。しかし、わずか数十年前まで、自家製のそばや豆、雑穀類を製粉する製粉所が各地で営まれ、農家の食生活を支えていた。
宮田村にある山田屋製粉所は、創業大正10(1921)年。昭和初期の機械を中心に16台の製粉機を駆使し、少量からの製粉の注文に対応できる数少ない製粉所だ。経営するのは山浦初枝さん(81)政喜さん(57)親子。3代目の初枝さん夫妻で、その歴史に幕が下ろされようとしていたが、2年前に政喜さんが後継者として帰郷、病気で思うように体が動かせない父・政治さんに代わって、製粉所を切り盛りする。
効率を求める現代の機械に比べ、人の経験と手を必要とするかつての機械たち。それらの声を聞きながら、食材のおいしさにこだわる山田屋製粉所。今回のいなまいニューススタジオは、山田屋製粉所を訪れ、山浦さん親子にそのこだわりの技について聞く。

16台の穀物加工機とともに
武田 ここには、何台の穀物加工機が―。
山浦(政) 16台あります。すべて現役で使っています。製粉所内にある機械を一つのモーターで各機械を駆動させるために、ベルトとシャフトで動かす工夫をしています。これも昔の人の知恵ですね。
武田 創業当時のものが多いですか。
山浦(政) だいたい昭和30(1955)年ぐらいのものです。それ以後はほとんど変わっていません。
武田 製粉の仕事が忙しい時代はどんな生活でしたか。
山浦(初) 大変でしたね。子どもが小さい時は、主人が勤めに出ていて、製粉は私一人でしていたこともありました。勤めに出ていた主人が昼食に戻った時に、調子が悪い機械を見てもらったりもして―。
武田 ここにある機械は少しずつ増やしてきたものですか。
山浦(初) 結婚した当初から少しずつ増やしたものです。本当によくやってきたと思いますね。
武田 小さいころから、政喜さんは製粉の仕事の手伝いをしていたそうですが、そのころの記憶があったことも、今回この家業を継ぐことにつながったんでしょうね。
山浦(政) いやいやながら、手伝っていましたね。手伝いといっても、仕上がり具合はわかりませんから、材料を運ぶ程度の手伝いしかできませんでしたが―。
武田 今、健康食がブームになって、キナコやアワの需要が高まってきているそうですが、製粉の手法そのものも、ゆっくりと製粉、精米したほうがおいしいそうですね。
山浦(政) お客さんからも言われますが、昔の機械のほうが、出来あがりまで時間をかけるので、製品が熱を持たないんですね。だから、おいしい、食感がいい―と。
武田 やはりそのほうがおいしい―。
山浦(初) そうです。おいしいです。
武田 実際に粉にしたものを目で見て、仕上がり具合はわかるものですか。
山浦(初) 例えばそば粉の場合、わかりますね。機械にかけっぱなしで回してもだめなので、具合をときどき見ながら、だんだん締めていくとか、出口を太くして圧力を強くする―など調節していきます。
武田 今回、息子さんの政喜さんが仕事を引き継いだわけですが―。
山浦(初) 自分で考えてやっていくようにと言っています。誰だって苦労はある―と。体験で覚えていかないと、わかりませんから。
武田 今、こうした機械を揃えようと思っても不可能でしょうから、そういう意味でも貴重な仕事ですね。
山浦(政) そう思いますね。故障した時も、戦前から長くおつきあいをしている農機具屋さんにお願いできるので安心しています。
武田 家業を継ごうと決意したきっかけは…。
山浦(政) 最初はそのつもりは全くありませんでした。でも、有機農業をしている若い人や、お客さんが「来てください」と手紙をくれたり、母親のところに「継いでください」と言ってきたり―。それで、これは必要とされている職業なんだ、と感じて継ぐことを決めました。継いでから2年半になります。
武田 有機農業をしている人や、小規模農家の中には、こういう対応をしてくれる製粉所があることを知らない人もたくさんいるでしょうね。
山浦(政) そう思います。1`から対応していますし、宅配便で送っていただいても大丈夫です。仕上がったら郵送しますので―。お客さんが納得したこだわりのものを食べるようになってきていますから、そういうこだわりある製品を作っていきたいと思っています。
武田 経験というのも大事なことですね。
山浦(初) そうですね。

製粉所内の黒板に書かれている単価表。数多くの種類の製粉を少量から受け付けるため、自家製の穀物の製粉を依頼にくる農家が多い(現在、少量の製粉を請け負う製粉所は極めて少ない)
そば粉は、富士見町や阿智村からも依頼があるという。珍しいかんざらし粉も扱う。かんざらし粉は、米の粉を寒中凍らせ、乾燥させたものを粉にしたもの。虫がつきにくく、冷蔵庫などがない場合、長期に保存できる利点があるため、昔から利用されていた。お湯にかんざらし粉を入れただけで食べることができるため、昔から農家のお茶請けとして親しまれていたもの

コキビやアワを製粉する機械
「健康食品がブームになっているためか、最近は、アワを持って来る人も増えてきています」(政喜さん)

そば粉をひく作業。初枝さんは今でも現役で仕事をしている


枡に入れた材料などをすりきりにするための道具。
「山田屋」の刻印を背負い、数十年にわたり、活躍




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