2006年8月5日放送 

森本尚武さん

野外に出よう 虫に触れよう

3年目を迎えた森本自然教室

子どもたちは夏休み。家族や友達と自然の中で思いきり遊ぶ時間を楽しみたい夏だ。山や川の自然に恵まれた伊那谷を実感したい夏でもある。
信州大学名誉教授の森本尚武さんは、自然を見つめる目、自然の不思議をおもしろがる目を子どもたちの中に育もうと、3年前から森本自然教室を開講している。今年も6月のモンシロチョウの卵の採集からスタート、採集した卵を家で育てたり、樹木や鳥類の観察など、さまざまな自然教室が予定されている。
今週のいなまいニューススタジオは、森本さんをゲストに迎え、自然の中で育まれる子どもたちの輝きについて聞いた。

子どもは自然が大好き
武田 夏休みといえば、子どもたちは昆虫採集が楽しみ―。
森本 そうですね。でも、今はあまりカブトムシ採りに興味を示さなくなってきているようですね。昆虫を好きな子どもは、土の中にいる幼虫を家に持ち帰って飼育をして成虫にする―。山へ成虫を採りに行く、という機会は少なくなっていると思いますね。
武田 そこで、「森本自然教室」が始まったというわけですね。
森本 今年で3年目になります。長野や佐久、木曽からも参加の申し込みがありました。今年の初回は、6月11日、信州大学農学部(南箕輪村)の野菜畑でモンシロチョウの卵を見つけて、家に持ち帰って成虫になるまで飼おう―というもので、キャベツの葉の裏に卵を産みつけた卵を探しました。この自然教室のために農学部で育てた野菜畑です。今年は冬が寒かったせいか、モンシロチョウの卵は少ししか見つかりませんでしたが、ガの卵などがたくさん見つかって、子どもたちの質問を受けました。
武田 チョウの卵の大きさは。
森本 数_という世界ですが、子どもたちは目がいいですから、よく見つけますね。次の回では、チョウの標本を作る―という教室を開きました。
武田 標本づくりにはじめて挑戦する子どもたちも…。
森本 そうです。でも、最初は、「虫は嫌だ」と言っていた子どもも、終わるころには「虫が好きになった」と言っています。親子で参加していますから、例えば、お父さんが一生懸命やっている姿を隣りで見ていますと、いつのまにか子どもも夢中になっている―という場面もありますね。
武田 親子で興味を示す、ということは大事ですね。森本自然教室では宿題も―。
森本 この教室の時間だけが学習ではなくて、家へ帰って親と一緒に続けてもらう、というのがねらいです。この教室の時間だけではすぐに忘れてしまいますから、家に持ち帰ってもらう、ということが大事ですね。
武田 これからの予定は。
森本 8月には樹木と「鳥類の観察」をします。鳥の種類がわかってくると、エサのために雑木林が必要なことも感じることができるんですね。そして、「草花の観察」。同時に、草花に来る昆虫も観察します。花に蜜を吸いに来る昆虫を観察することで、その関係がわかりますね。9月には「昆虫の形態観察」。どんな目をしているか、脚がどこから出ているか、頭と胸とお腹がどんなふうに分かれているか…どんな構造をしているかをじっくり観察します。
武田 この教室を通して、興味や知識が広がりますね。
森本 子どもは、覚えるのが早いですから、どんどん身に付いていきますね。

虫を好きになってほしい
武田 私自身が小さいころは、遊びとして昆虫採集をしていましたが、今の子どもたちは…。
森本 そうですね。虫を怖がってしまうことが多いですね。
武田 チョウでも嫌がりますか。
森本 最初はチョウも嫌がることが多いです。一緒に来る親のほうは草花に興味を持って、子どもたちは昆虫を好きになる、ということが多いようですね。子どもたちは、最初は怖がっても、すぐに昆虫を好きになっていきます。教室では、まず「虫を好きになってほしい」という目的で子どもと接しています。自然の中で何が面白いか―ということをまず子どもたちに示すこと。その中から子どもたちは自分で面白さを見つけていきます。中でも、昆虫の飼育を経験させること。昆虫は、卵から成虫になるまで形が変わっていきますから―。小さな卵から脱皮したりしながら成虫になっていくことを面白がってほしいと思います。そこで感動があるんですね。脱皮することで感動する子どももいれば、チョウの羽の美しさに感動する子どももいる…自然の中は、一見、何の変わりもない昆虫の生活があるように思いますが、飼育してみると、そうしたいろんな面白さがあるんですね。
武田 特に昆虫の場合は、形態を変えていきますから、子どもにとっては面白い―。
森本 そうです。いろんな昆虫の野外での生活の面白さを感じてほしいですね。例えばモンシロチョウの小さな卵を見つけると、他の小さな卵や虫にも自然と目がいきます。

まず野外へ
武田 私自身、夏休みの思い出といえば、家の近くのお宮にあったケヤキの大木に、セミの抜け殻がたくさんあって、家に持ち帰って観察したこと―。そうしたことが日常でしたが、今の子どもたちは、そういう機会が少なくなっているようです。
森本 とにかく野外に出てみることですね。野外に出てみると昆虫だけでなく、植物にも、いろんな面白さが見えてきますから。信州は自然が豊かだ、とよく言われますが、具体的にどう豊かなのか―それを本当の意味で知るには、自分で野外に出てみて感じることなんですね。今は、親の世代も知らないことが多いですから、自然教室では子どもにも親にも経験してほしい―と思っています。
武田 夏になると、冷房が効いた部屋で窓を閉めていることも多い。でも、窓を開ければいろんな虫が入ってきて、感じることもできます。そういう機会が少ないことも―。
森本 そう思いますね。体を動かさなくてもいい。考えなくてもいい。好きなものは何でも手に入る―。そういう時代ですから、まず外へ出ることですね。野外で考えることで、体と心に刺激を、ということです。大人も一緒に。
武田 夏休みになると、昆虫を人工的に集めて子どもたちに見せる―ということもありますが…。
森本 私自身は、それはあまり薦めませんね。やはり自分で採る、自分で考える。それが教育だと思います。魚を一定の場所に放してつかまえる、ということもありますが、それは一つのゲームですね。そういう経験では、自然に親しんで、本当に昆虫や生き物が好きになる―ということにはならないと思いますね。
武田 そうですね。しかも、そういう経験だと、どこにでも昆虫や生き物はたくさんいるんだ、と錯覚してしまうことも―。
森本 そうかもしれません。自分の足で野外に出て、本当に好きになっていく、そういう経験が一番大事でしょうね。
武田 そうやって野外で採った昆虫を標本にする―という意味は…。
森本 標本は、こういう場所でこういう虫が採れた、という一つの記録です。同じ場所で、ある年には採れて、ある年には採れない―という場合もありますね。そういうことで、自然の変化を学ぶこともできます。また、環境条件によって、同じ昆虫でも小さくなったりもします。エサが悪いと、変わったものも出ます。そうしたことを感じることも大事ですね。もちろん、採り過ぎないようにしなくてはいけませんが、実際に採ってみないと感動はありませんから―。教室に参加した人から、「家の中が虫籠でいっぱいに」「図鑑が増えた」などのお便りをいただくと、本当にうれしいです。
武田 一つの昆虫が好きになると、そのエサになる植物にも関心が向いて―そうやって興味が広がっていく。そして、自然界に気持ちが向いていくことが大事ですね。
森本 各学校でも、課外活動などでぜひ、もっと野外に出てほしいと思います。

信州大学農学部の野菜畑でモンシロチョウの卵を探す参加者。キャベツの葉の裏に産みつけた小さな卵を探していると、他の昆虫の卵や幼虫もたくさん見つかった(6月11日)


チョウの標本づくりに挑戦。
大人も子どもも真剣(6月18日)


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