2006年6月10日放送 

白鳥博さん

自然界の恵みをいただく

食物の機能性にこだわり続けて28年

日照率が高く、水清らかな伊那谷は、多様な農作物が栽培できる環境に恵まれている。最近では、食に対する関心が高まり、『食育』の大切さもようやく言われはじめ、郷土で昔から食されていたものにも注目が集まってきた。
私たちが毎日、口にする食べ物。それをエネルギーの源にしていることを、もう一度改めてしっかりと見つめ、この恵まれた大地に感謝することも大切だろう。
いなまいニューススタジオでは、伊那谷で28年前から無農薬有機栽培にこだわり、機能性を最重視したリンゴや野菜を栽培している白鳥農園の白鳥博さんをゲストに迎え、2週にわたって、これからの『食』、そして『食育』について聞く。

白鳥博さん
名古屋で畜産指導の仕事をしていたころ、農産物がおいしくないことを痛感。実家の事情もあって伊那市に戻り、昔ながらの農業で「白鳥農園」を始めた。そこにあったもの、自然界にあるものしか使わないという昔ながらの農業を、近くのお年寄りなどに聞いて教わりながら、無農薬有機栽培で機能性にこだわった農産物を作ろうと決意。以来28年間、こだわり続けている。数年前、息子の昇さんも会社勤めを辞めて後継者となり、共に土と農産物を育てている。また、子どもたちに食の大切さを伝えようと、リンゴ畑を開放し、食育にも力を注ぐ。昭和14(1939)年生まれ。伊那市西箕輪。

こざわりの28年
武田 農業を始めて28年になるそうですが、そのころから無農薬有機栽培にこだわっていたそうですね。
白鳥 若いころ都会に暮らしていましたが、とにかく農産物がおいしくないと感じていました。子どものころに食べていた農産物とこんなにも違うのかと。仕事で動物に関係していたので、微生物などにも関心があって、栄養価や機能性がある農産物を作りたい―ということで始めた農業です。
武田 除草剤を使わない農業―。
白鳥 農業というより百姓という考え方です。畑というのは、母なる大地。生み出す源が大地です。その大地、地球は菌に覆われていますから、土の中にも土壌菌や土壌昆虫類がたくさんいます。そういうものを大切にしていきたいと。ですから、除草剤や化学肥料など、自然界にないものは極力避けて―。
武田 この西箕輪地区の気象の特徴は。
白鳥 標高が高いということもありますが、寒暖の差が年間平均10度あります。この2、3年の観察では、寒暖の差が14〜15度ありますね。
武田 そのほうがリンゴにとっては、いいということですか。
白鳥 そのほうが生命体は強くなります。特にリンゴの場合、ゼラチンが重要視されますが、醸成された質のいいタンパク質ができます。
武田 果物にしても野菜にしても、自然に対抗しようとしますから、人間に言いかえれば、鍛えられて強くなっていく―ということですね。
白鳥 そういうことですね。生命を維持する、子孫を残していくために強くなっていくんですね。
武田 日照時間や雨量については。
白鳥 雨量は、この地域は比較的少ないです。日照時間は、日本でも有数な長いところだと言われていますね。朝陽は早く当たりますが、西陽は山に遮られますから、紫外線を防ぐことができる。リンゴの場合は、西陽を浴びたほうが色づきがいいですが、中のゼラチン質にとっては紫外線が当たらないほうがいいですね。機能性ということになってくると、今問題になっている温暖化は、果樹農家にとっては大変なことです。

子どもたちに伝えたい「食」の大切さ
武田 機能性について感じていることは。
白鳥 栄養価がない見た目だけのものが多いですね。農薬はこの数年、ようやく問題にされるようになってきましたが、あとは栄養価の問題だと思っています。60兆個とも言われる私たちの中にある細胞は、毎日新陳代謝しているわけですね。新しく生まれてくる細胞のエネルギーを、どんな形で得ていくかということが、これから問われると思います。医療費の問題にもかかわってきますね。
武田 見た目ではなく質―。白鳥農園では加工用によく使われる紅玉というリンゴも、たくさん栽培していますね。
白鳥 この紅玉は、特にペクチンがたくさん含まれています。これには、免疫力を強める働きがあります。さらにペクチンの質も問われますね。一般需要としては、ほかの種類のほうが好まれていますが、特に機能性を重視することになると、やはり紅玉系のリンゴが重要だと―。
武田 これから、だんだん見直されていく可能性がありますね。
白鳥 そうですね。紅玉には、酵素も多いです。酵素が多いリンゴほど早くやわらかくなってしまいますが、機能性という点では、紅玉はいいリンゴだと思いますね。こういうことを、教育の一環で子どもたちに教えて欲しいですね。例えば、スェーデンなどでは、小さな子どもたちに食物の機能性の話をしています。日本でもぜひ取り組んでほしいと思います。
武田 食育、というのは最近ようやく言われ始めたところです。今までは、ほとんど取り組まれていませんでしたから―。
白鳥 そうですね。これからお母さんになる人たちにも、ぜひそういう認識を持っていただきたいと願っていますね。
武田 除草剤を撒いていない白鳥農園には、たくさんの微生物が住んでいますね。
白鳥 この大地は、特にマグネシウムが多く、土壌菌が比較的少ないので、いかにいい有機質を入れて土壌菌を増やすか―ということで取り組んでいます。除草剤を使っていないこの大地では、1cの土で5億〜6億ぐらいの土壌菌がいると考えています。これが除草剤を10年ぐらい使った場合、おそらくその10分の1もいないかもしれませんね。土の中の土壌微生物はもちろん、昆虫類も激減してしまいますから―。ここでは、除草剤は一度も使っていません。
武田 草との戦いという面もありますね。
白鳥 それは大変ですが、草の中にはいろんな昆虫がいます。リンゴを食べる虫もいますが、その虫を食べる虫もいる。共存共栄がおこなわれているんですね。百姓というのは、母なる大地から植物体を産む、育てる―ということ。機能性を大事にします。農業になると、いかに生産性を上げていくかということも大事になりますが―。
武田 白鳥さんのものは、形や色など規格から外れてしまうものが多く、通常の販売ルートでは、なかなか大変だそうですね。
白鳥 ほとんどが外れてしまいますから。でも最近は直売などの販売ルートもできて、わかっていただけるようになってきました。

白鳥さんのトウモロコシ畑。さまざまな有機肥料を工夫して栽培している
「植物が吸収したものを我々がいただいて、新しく生まれてくる細胞のエネルギーにするわけですから、ミネラルやアミノ酸がどういうもので構成されたタンパク質か―ということはとても大事です。そういうことが重要視される時代になってくると思っています」(白鳥さん)

子どもたちに開放しているリンゴ畑。子どもたちには、できるだけ裸足か綿のくつ下で歩いたり、走りまわったりしてほしいと話しているという
「地球が持つマイナスイオンを体内に入れることは、健康にとてもいいですからね」(白鳥さん)

白鳥農園のリンゴたちも小さな実をつけ始めた




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