| 武田 |
ソバは健康面でもいいそうですね。 |
| 氏原 |
昔から、毛細血管を強くするルチンという成分が入っていることはわかっていました。最近ではダイエットにいい―ということや、低カロリーで繊維、ミネラル、タンパク質にも富んでいるということで健康食として、世界的に見直されつつありますね。 |
| 武田 |
ソバのルーツといえば。 |
| 氏原 |
バイカル湖からアムール川のあたりに野生種があることから、北から南にソバが広がったという北方説を、今から100年ほど前にスイスの学者が出しました。ところが30年ほど前から、中国の南部に野生種があるようだということで集めて比較したところ、中国の雲南省の高原地帯が原産地ということがわかりました。新石器時代ぐらいには北上していって、その地域にあったソバが改良されて、シベリアまで行ったんですね。日本には縄文時代に、すでに入ってきています。 |
| 武田 |
かなり昔の人たちから、ソバを食べていたということ。 |
| 氏原 |
中国からモンゴル、シベリアにかけてですね。日本で一番古い記録では、722年の詔にはじめて「ソバ」という言葉が出てきます。休耕作物として作られたようですね。ソバを作って備蓄しておくように―とあります。 |
| 武田 |
日本以外ではどんな食べ方を。 |
| 氏原 |
麺のように食べるのは日本が一番多いですね。あと、韓国、中国、ブータンでは、トコロテン式に押し出して食べています。ロシアから中国一部、欧州、カナダ、米国ではソバ粥のようにして―。米国では西部劇のころに食べていたという記録もありますね。主に北半球全域で食べられていた―ということですね。 |
| 武田 |
世界的に一番食べられている国は。 |
| 氏原 |
中国ですね。10万f以上栽培しているのが13省ありますから。ソバ製品はあまり売られていませんが、酢や醤油に加工されていたり、成人病にいいということで、病院でたくさん使われているようです。 |
| 武田 |
信州人とソバは切り離せませんが、信州で食べられているソバは、最近では国産が少なくなっているそうですね。 |
| 氏原 |
去年の統計では、日本で1年間に必要とされるソバの量が約13万d。そのうち、9〜10万dが中国から入っています。そのほか、5〜6千dがカナダ、米国、ミャンマーなどですね。国産では、江戸時代からの記録を見ると、関東一円でソバは作られていましたが、「究めて上物は信州なり」という記述もあります。信州は標高が高くて涼しいので、貯蔵条件がいい―ということだと思いますね。 |
| 武田 |
世界の他の地域と比べても、信州産は質がいいと―。 |
| 氏原 |
麺にするには信州産にかぎると思いますね。外国でパンにしたり、パスタにしたり―ということになると、ソバそのものの味がなくなりますね。日本人が好むのは、ソバ独特の香りと粘りとのどごし。これはもう麺やソバがきなどでしか味わえません。日本独特の伝統的な食文化でしょうね。日本が作り出したもの―ということでしょう。 |
| 武田 |
最近では、赤いソバの栽培もされていますね。 |
| 氏原 |
1975年、ヒマラヤに学術調査に行った時に出会ったソバですね。ヒマラヤ山麓であんまりきれいだったので、ぜひ日本にと、高嶺ルビーと名づけて栽培を始めました。在来種よりも少し小粒ですが、味はなかなかいいです。これからは、こうした特殊な種が付加価値を伴って栽培されるようになれば、農業にとっても、農村にとってもいいと思っています。見て楽しく、食べて楽しく。 |
| 武田 |
ソバの魅力といえば…。 |
| 氏原 |
ソバを打つ側の魅力で言えば、同じ素材で同じような製粉をして10回打っても、自分が納得いくようにできるのは1回か2回。気温とか湿度、体調、気分…何か違ってくるんですね。やってもやっても、なかなか行きつけないという奥の深さがありますね。 |