| 武田 |
境先生が担当する動物バイテクコースではどんな授業を。 |
| 境 |
先日は、昨年10月に人工授精をしましたので、その受精が成功して妊娠しているかどうかという授業がありました。牛は体が大きくてお腹の上からでは妊娠鑑定ができませんので、直腸に小さな器具を入れて、直腸壁越しにお腹の中の様子を超音波の機械で撮影して、妊娠しているかどうかを見ます。 |
| 武田 |
かなり高い技術が必要ですか―。 |
| 境 |
高性能な機械なので、少しの練習で簡単に妊娠鑑定ができるようになっています。本来なら、手だけで妊娠鑑定する非常に難しい技術ですが、その鑑定を映像で見ることができるので、間違いなく鑑定することができるようになりました。この日は、ありがたいことに妊娠を確認できました。上農高校では今、黒毛和牛を約20頭飼育しています。今回は人工授精で子牛が生まれるわけですが、地域の皆さんにも協力していただきながら受精卵をたくさん排卵していただいて、その卵子を回収して、その受精卵を地域農家に提供することもしています。 |
| 武田 |
受精させるというのも、かなり難しい技術ですか。 |
| 境 |
私自身、できるようになるまで何年もかかりましたが、若い高校生たちは吸収がとても早くて、数カ月でそこそこできるようになっていますね。今回人工受精に成功した柴くんという生徒は、高い技術も持っていますが、何よりもやる気があります。柴くんの場合は、関連の大学に進学して、人工受精の資格を得て、就農する予定です。もうすでに私自身が教えることはほとんどありませんから、今度は彼が後輩たちの面倒を見てくれるのではないかと期待しています。 |
| 武田 |
地元の皆さんはどんな形で協力を。 |
| 境 |
受精卵の回収や移植する時など、本当に地元の優秀な技術者の皆さんが来てくださり、一緒にやってくださっています。生徒たちの中には、実家で牛を飼っているのは1人だけですが、卒業後、「自分で牛を飼いたい」と強く思っている生徒もいますね。 |
| 武田 |
最初に人工授精に取り組む時は、生徒たちにもためらいがあったのでは―。 |
| 境 |
そうですね。でも、一回経験すると、おもしろいもので生徒たちの中に連帯感のようなものが生まれてくる気がしますね。それに、いつでも子どもを授かるわけではありませんから、動物の活動に合わせていきます。生徒たちは早朝、ときには深夜、泊まり込んで分娩観察をすることもあります。私が教える、というよりも動物から一緒に学ぶ、というスタイルで―。 |
| 武田 |
ここに生徒たちの生の声を集めたアンケートがあります。例えば先日の授業で人工受精に成功した柴くんの言葉に「上農高校に来て動物について深く学んでいくうちに犠牲にならなくてはいけない命が、食物連鎖の大切さが、よく分かった」とあります。また同じクラスの伊藤さんは「普段食べている牛肉がどのように食べられるようになるか、牛を屠殺するところから見たり、授業を通して野菜作りの大変さを知った」とあります。いのちから学んでいる様子がよくわかりますね。やはり、触れてみなければわからない、実際にやってみなければわからない感想が多いように感じます。 |
| 境 |
聞いただけのことはすぐ忘れてしまいがちですが、見て覚え、実際に自分の手でやって理解していくという授業をしていますし、また、上農高校の中だけではとてもできないことを地域の皆さんに教えていただいています。そういう中で素晴らしい勉強ができていると思っています。 |
| 武田 |
その中で、循環型農業への取り組みも―。 |
| 境 |
牛は人が食べることができないワラなどを食べてくれて大量のフンをします。そのフンがまた次の新しい作物を作ってくれる―ということで、循環については、実践の中で今後もっともっと力を入れていきたいところです。 |