2005年12月30日放送 

武田徹キャスター 竹村浩一編集局長

いなまいニューススタジオ総集編 伊那谷この一年

放送開始から255回目 5年目を終えて

平成17(2005)年もあとわずか。あっという間だった―、長かった―、それぞれに振り返る時間を迎えていることだろう。
いなまいニューススタジオでは、今年元旦の放送から総集編まで、計53回の番組を放送。5年目を終え、計255回の番組を重ねさせていただいた。多くの皆様とのご縁に感謝しながら、伊那毎日新聞社・竹村浩一編集局長とともに、上伊那のこの1年、いなまいニューススタジオのこの1年を振り返る。

上伊那の重大ニュースを振り返る
武田 今年は伊那毎日新聞も創刊50年を迎えました。地域に密着した新聞というのは意義があると思います。最近、活字離れとも言われますが、伊那毎日新聞は購読者が増えているそうですね。
竹村 おかげさまで、ここ数年、増えているという実感があります。ありがたいと思っています。
武田 この1年を大きく振りかえると、どんな印象がありますか。
竹村 大きく分けて、前半は前年から続いている市町村合併の動きがありました。伊那市・高遠町・長谷村が合併ということになり、駒ヶ根市、飯島町、中川村は、住民投票などの結果を受けて合併が白紙になり、それぞれ自立の道を選ぶことになりました。伊那市・高遠町・長谷村については、来年3月31日に合併―ということになります。
武田 今、合併に向けて着々と進んでいる―という状況ですね。
竹村 合併については、伊南(駒ヶ根市、飯島町、中川村)地区が自立を選択したというのは、意外だととらえる人と、予想どおりだという人と分かれましたが、大きな理由としては、「中央アルプス市」という合併後の新市の名称への反発が大きかった印象がありました。
武田 伊那市・高遠町・長谷村については―。
竹村 しこりが残るとすれば、要望があった住民投票がされなかったという点でしょうか。
武田 合併するのであれば、魅力あるいい市にしてほしいですね。
竹村 そうですね。これからの課題としては、住民の組織、地域自治区が作られていくと思いますが、それがどのように機能していくか―というところだと思います。住民との協働。それによって、ずいぶん新しい市の色が変わっていくと思いますし、合併を契機に、自分たちが住んでいる地域に目が向けられればと思います。
武田 これからは、財政的にも厳しい時代になりますから、自分たちでできることは自分たちで―ということ姿勢が大事になりますね。自立を選んだ市町村については。
竹村 財政的には工夫が必要になっていくでしょう。合併を決めた伊那市と自立を決めた駒ヶ根市の間にある宮田村は、自立を決め、協働の受け皿づくりを進めて、いろんな工夫をしていますし、工夫をすれば、いろんな色が見えてくると思っています。
武田 教育問題については。
竹村 高校再編問題が大きな関心事でしたね。6月に県立高校の再編案が発表され、上伊那でも具体的な高校名があげられました。今、議論の最中ですが、それぞれ地域の事情もありますし、母校がなくなるかもしれないということで反対運動もありました。結局、一番問題なのは、魅力ある高校づくり、そこに行き着くと思います。魅力ある高校づくりについて、もう少し協議する時間がほしい―という声が聞かれます。本当に、各地域、各高校の事情がありますから、時間をかけてほしいですね。上伊那の場合は、高校生も立ちあがって、声をあげています。
武田 子どもの安全対策については。
竹村 広島、栃木での凶悪事件もあり、これほど地域が安全対策に力を入れた年もなかったのではと思います。駒ヶ根警察署管内では、1月に小学校6年生の児童が声をかけられ、ランドセルを切られた事件がありました。これが住民に大きなショックを与えました。それから、声をかけられて倒されたとか、手をつかまれたなどの事案が続発しましたね。このことで、子どもたちが人間不信になってしまうのでは―という問題もあります。飯島町での事例では、サングラスとマスクをかけた人に声をかけられ、女子中学生が不審者だ、と逃げたそうです。実際は、不審者ではなかったのですが…。
武田 解決策としては、「監視員」という腕章をつけて地域を歩くなど、地域の大人たちが何とかしないと、どうしようもないことです。
竹村 そうですね。高齢者の皆さんに散歩していただくなど、地区と保護者と学校と警察と行政で取り組む体制が、ようやく整い始めたところですね。
武田 今年は事件、事故も多かったようですね。
竹村 連続放火事件。伊那市入舟の繁華街で、放火による火災がありました。放火犯はつかまりましたが、住民の皆さんは自主的にパトロールをするなど、不安な夜が続きました。
武田 経済については、伊那毎日新聞社が事務局をした輝く経営者キャンペーンが一応区切りとなりました。これをきっかけに、地域の経済に携わる方々のネットワークが築かれたのでは―と思っています。
竹村 取材させていただいた経営者の皆さんからも、そうした声が届いています。いろんな意味で価値があったのではと思っています。

いなまいニューススタジオこの一年
武田 いなまいニューススタジオのこの1年では、新しく始まったシリーズ「道―土地の記憶」。これが印象に残っています。それぞれの土地にいろんな記憶があって、それが知恵にもつながっていることを実感しました。伊那市の伊那部宿近くでは、豊富な水が湧いている場所もありました。
竹村 私も、知らない場所がたくさんありました。
武田 「道―土地の記憶」では、法華道(高遠町芝平)を歩きました。
竹村 この道については、伊那毎日新聞への投書があり、それで知りました。
武田 法華道を守ろうと、芝平出身の北原厚さんが、笹を切り開いて道を開いているんですね。景色がいい場所でした。法華道がある法華谷。ここにあるぼたん寺として知られる遠照寺のボタンは、今から20年前、たった3本植えられたことからだそうです。今では長野県でも有名なぼたん寺になりました。こうしたお寺が中心になって、地域の共同体が復活するといいと思いましたね。それから、「道―土地の記憶」では、高遠町の六道井も歩きました。ここも景色が素晴らしく、地元の人もあまり知らない場所だそうです。
竹村 あまり知られていない、素晴らしい場所がたくさんありますね。
武田 また、シリーズ「里山に暮らす」では、長谷村の炭焼き名人・伊東修さんを訪ねて、自給自足の暮らしを取材しました。本当に驚きました。大変苦労して水田も作っているんですが、炭焼きも野菜づくりも、伊東さんはとても楽しんでいます。私たちがすっかり忘れてしまっている生活を、今まさにしている。都会、長野県でも都市部に住んでいる人にも、こういう暮らしは楽しい、と伊東さんも勧めていましたね。うらやましい暮らしでした。
竹村 本当にうらやましいですね。
武田 それから、温暖化の問題。番組では、気温が高くなったために赤くならなくなったジョナゴールドというリンゴ栽培をしている松川町のリンゴ園を訪れました。温暖化のために、品種を変えざるを得ないと。大変な問題です。また、これまでもっと南にいたチョウが伊那谷で見られるようになったとも聞きました。
竹村 伊那谷特有の霧の発生が変化してきたことも、温暖化の影響のようですね。
武田 この秋には、旧春日街道(駒ヶ根市)を歩きました。大変のどかな道で、看板がなく、車も少ない。歩くには最高の道でした。その道は、太田切川を越す場所があり、昔かけられていたはね橋の礎石が、太田切川の中で発見され、実際に見てきました。水害があっても、橋は流れても礎石は流されずにまた橋を再建できる、知恵が詰まっていましたね。
竹村 本当に知恵ですね。
武田 それから、9月には、天竜川河口近くの砂浜に行って、天竜川上流の子どもたちと一緒にアカウミガメの放流を体験してきました。アカウミガメの赤ちゃんは本当に元気がよくて、力強い。このアカウミガメは、約20年後、またこの砂浜に産卵にやってくるそうですが、確率は5千分の1だそうです。いかにこの砂浜が大事か、一緒に参加した子どもたちもきっと感じたと思いますね。

来年に向けて
武田 来年はどんな1年に。
竹村 上伊那では、2月4日に権兵衛トンネルが開通して、伊那谷と木曽谷の交流がいよいよ始まります。それから、伊那市・高遠町・長谷村の合併が3月。新しい展開が始まりますね。
武田 いい市にするため、住民の皆さんも一緒になって盛り上げていってほしいですね。
竹村 行政まかせの時代ではありませんから、住民参加がますます大事になると思います。
武田 いなまいニューススタジオでは、これからも「道―土地の記憶」は続けていきたいと思っています。来年は戌年。犬も歩けば棒に当たる、と申しますが、来年も犬のようにあちこち歩きながら、土地の記憶を吸い上げて、先人たちの知恵をお伝えしていきたいと思いますね。21世紀後半、ますますそうした知恵が大事になっていくでしょう。

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