2005年4月22日放送 

三井貞明さん 田山重晴さん 南峰夫さん

伊那谷に根づくものづくりの源

元気企業に学ぶ

この地域で輝いている経営者に学び、上伊那を元気にしようとスタートした「上伊那輝く!経営者キャンペーン」は、これまでに伊那毎日新聞紙上で94社を紹介、いなまいニューススタジオでは43社を紹介してきた。スタートからちょうど2年が経過し、このほどキャンペーン推進委員会が発展的解散、新たなステージで、さらに上伊那経済を元気にする取り組みに向かう。
今回のいなまいニューススタジオは、同推進委員会の三井貞明委員長(元養命酒工場長)田山重晴委員(前上伊那地方事務所長)南峰夫委員(信州大学大学院農学博士)をゲストに迎え、同推進委員でもある武田徹キャスターとともに、2年間を振り返る。

世代を超えて伝えるもの
武田 この2年間で一番感じたことは。
三井 この地域に、こんなにいろんな会社があって、どの企業も元気だと感じましたね。企業の方々にも本当に喜んでいただけたと思っています。
大学は、商品を作ることよりも研究、教育が仕事です。企業の現場は実際にいい商品を作る、いいサービスを提供するということ。そこに、いかに企業の皆さんが戦略を立ててやっているかを見せていただけました。これから、地元の企業と産学連携をしていくことを考えると、まず企業をよく知らなければ始まりません。いい経験をしました。
田山 「官」の立場では、これまで上伊那の産業についてデータ、統計で見ていましたが今回、数字ではなくて個々の表情と顔を持った企業、具体的にその姿が見えてきました。しかも、伊那谷という風土の中に立脚しながら、厳しい競争の中で志を立ててやっている企業に触れることができたことは、感銘深いものがありました。
武田 登場した94社の中で、創業者が51人、2代目が24人ということでした。世代交代については、どのように感じましたか。
三井 94社の中に3社の酒屋が入っていますが、3社ともすべて世代交代していますね。創業者も2代目もよく知っていますが、非常にうまくいっていると感じました。2代目は創業者をよく見て、取引先や商品などをよく知っています。3代目になると、親と違うものを作りたいと思うようになって、思いきって改革することによって失敗する例も聞きます。100年以上続いている老舗企業を見ますと、思いきって革新するのではなくて、会社の理念や人、取引先への対応がきちんとできています。例えば、登場した酒屋は、3代目、4代目のところもありますが、若い社長たちがうまく地場のものを生産し、地場のものを使い、地場の人に飲んでもらおうとしている。そういう酒作りを始めているので、安心していいのではと思っています。
武田 機械、精密などは日進月歩で、常に変化しています。そういう場合の世代交代で大切なことは。
研究をしていく場合も、5年、10年、30年という具合に、短期、中期、長期の見通しを持ちながらやっています。例えば2代目は、創業者が築いた上に立って、10年、20年先を見越して、どんな技術を学んでいくか―。そこが重要になると思いますね。
三井 長く続いている企業は、商品を変える必要がないというのではなく、時代に即応して、少しずつ商品の変化をしながら続けていく。その難しさはあると思います。ほかに取引先とのきちんとした連携、社長の人間の魅力がなければ―。

志高き経営者たち
武田 伊那谷の経営者の特徴を感じた点はありますか。
田山 伊那に赴任した時の第一印象は、山が高く、河岸段丘があり、伊那の人たちは幼いころから常に山を見上げてきた―。山を見るということは、その向こうに何かあるということで、理想や志を立てた企業人の方が非常に多いと感じました。それと、例えば登場した企業の中に、超精密加工を得意分野にしている企業がたくさんあるように、一つのものにこだわって技を極めていく。そうした企業人が多くいることを感じました。山を見て、きれいな自然の向こうに何かある、自分自身の崇高なものを何か求めていこう、と。
武田 今回の94社の中には、4代目という企業もありました。
田山 昔、企業というと1代30年と言われました。4代というと120年。企業は大変な競争の中で切磋琢磨しながら、毎日が真剣勝負だということを今回痛感しました。それが4代も続くということは、守りながらも新しいものが常に芽生えている、そういう努力があったと思います。

こだわりの経営者たち
武田 具体的に印象に残っている企業、業種は。
【ハヤシ】の社長の言葉に「難しくなければおもしろくない」というのがありました。このキャンペーン全体で、一番多く出てきた言葉が「こだわり」だと思います。そこでしかできないものづくりを実践されていると思います。
武田 かつて日本は、ものづくりで成り立っていたと言われていますが、最近は、その力が弱くなっていると言われます。この社長のように、ものづくりにこだわる。そういう若者が増えるとうれしいですね。
三井 印象に残った企業はたくさんあります。【ネハシグループ】は、実際に会社を見せていただきましたから、特に印象深いですね。そこで根橋社長は、製造するためのもとの機械は外国製だと言っていました。外国のものだと長期に使えるが、日本のものは短期的にしか使えないと。それがこの地域で作られて、日本の機械で日本のものが作られていくことができれば、と感じました。
田山 【ナパック】という会社は、海外へ出るかどうか悩む時期があったそうですが、「伊那にとどまる」と決然として決めた。その後、着実に成果を上げながら、今なお企業経営に努力していますね。それから地元の木材で家づくりまちづくりをしている【工房信州】(現フォレストコーポレーション)、木工、建具の世界で技を磨き、地域の広葉樹を使って「山のいのちを生かすんだ」と言っておられる【有賀建具店】。そして、長谷村の【みらい塾】(フラワーポケット)。非常にユニークな山の中の存在だという印象があります。

伊那谷の恵みを生かす
武田 伊那谷という地域を、どんなふうにとらえていますか。
田山 2つのアルプスに囲まれ、その間を天竜川が流れ、階段状の段丘―。おおげさに言えば、グランドキャニオンにも匹敵すると思っています。その中には中央道が走っている。そういう中にあって、伊那の人たちの可能性が一気に開花するような条件ができたと思っています。水があって、豊かな自然があって、昔の農業で鍛えられた頑張りズム、そういうものが合わさった。さらに、ものづくりの世界のメッカである中京圏にも非常に至近距離にある。そこから若干奥地に入ったことによって、きちんとモノを見る場合、そうしてきちんと距離をおきながらあるという地勢学上の位置も、ものづくりには素晴らしいのではないかと見ています。
武田 伊那谷の人は、人間のつながりにこだわりを持っていると感じますね。
田山 長野市がある北信は、県庁があり、行政や各種団体など要望要求するための各種の組織があります。そういうものが伊那谷にはない。ないから、自力で行こうと。そして、地域の歴史や自然に対して自信をお持ちですね。こういう条件があって、初めて自立の気運が生まれる素地があると思います。
伊那谷は両アルプスから、きれいな水がたくさん流れてきます。その素晴らしい水ときれいな空気を生かした産業が育っていますので、それを地域の基盤として、さらに生かしていくべきではないかと思っています。
三井 緑が多いですから、目が疲れた時に緑を見ることで癒し、仕事に精出す。仕事をしていても、自然の恩恵をたくさん受けています。人間的には、明るさを持ちながら個性が強い印象がありますね。その個性が、ものづくりに適していると思います。

これからの元気のもと
武田 グローバリズムと言われますが、地域性も大事ですね。グローバルとローカルという視点から、これからの伊那谷は、どんな姿に―。
田山 右肩上がりの時代が終わり、厳しい時代に入っていますから、チャンスは多くはありません。堅実であることが大事ですね。ある企業人に聞いた話ですが、企業として大事なのは「マーケティング、個性ある技術、企業としての信」だと。それと自分の得意な分野で勝負をすること。それによって、これからの社会を乗り切る堅実な企業になるのではないかと思います。
世界と勝負するには独自の技術がないといけない。今回、紹介した企業の中には、そういう企業がすでにありますね。一つの独自の技術を持つことが、ローカルな企業が世界と勝負するのに非常に重要と思います。
三井 大量に作って外国に出すというのではなく、または外国に工場を建てるのではなく、どこにも負けないものを作って、それを輸出する―。そういうことをしていかないといけないと思います。今は多くの会社が外国に出ていますが、地元でしっかりしたものを作り、地元でまず消化する。これの拡大だと思います。大量生産大量消費の時代とは違うのではないかと。
武田 今回のキャンペーンで、伊那谷に、こういう企業があったと知った人も多かったと思います。今後、企業経営者、従業員の交流も大事になってきますね。
田山 非常に大事。しかも、同業種だけではなくて異業種交流。知ることによって、地元でいい結びつきが生まれ、チャンスが生まれ、可能性が生まれる。ぜひそうしていってほしいと思います。

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