2005年4月2日放送 

駒ヶ根市 水上平八郎さん

森は楽しい いのちの宝庫

森と川に抱かれて

中央アルプス山麓に近い里山。近くを中央自動車道が走るその中に、自然の力がいっぱいに詰まったシイタケ栽培の森がある。そこは、オオタカやハイタカなど貴重な野鳥が、絶滅が危惧されている植物が、住みかとしている森でもある。
かつて当たり前のように動物や植物がいきいきと、その生命の営みを楽しんだ里山に生きる人々を追うシリーズ「里山に暮らす」。今回は、駒ヶ根市でシイタケの原木栽培を営む水上平八郎さんを訪ねた。

水上平八郎さん
小学校1年生の時に父親がシイタケの原木栽培を始め、手伝いながら後継者としての思いを固めた。大学卒業後、シイタケの原木栽培に本格的に取り組む。現在は、平八郎さんの後継者となる大学生の息子さんも手伝う。シイタケの原木にするための育林をはじめ、使い終えた原木の堆肥化、炭焼きなど、里山の恵みを里山に返しながら、森の生活を営んでいる。駒ヶ根市。長野県指導林家。

森の後継者として
武田 この森には、小さな菌類から動物、たくさんの生き物の気配がします。
水上 カモシカ、サル、キツネ、タヌキ、クマ、イノシシ…あらゆる動物がいますね。オオタカ、ハイタカなど貴重な鳥もいます。やはり、自然の川がしっかりしているということ、山がしっかりしているということですね。
武田 そういうところでできたシイタケですから、おいしいでしょうね。
水上 本当においしいです。変動はありますが、年に1dぐらい、主にこの上伊那管内に出荷しています。
武田 まさに地産地消。こちらでのシイタケ栽培はいつから―。
水上 父親の代、昭和37(1962)年からです。当時は小学校1年生でした。
武田 当時から、お父さんのシイタケ栽培を手伝って…。
水上 そうですね。自然の中で遊びながら…。山の中が大好きで。継ぐという気持ちもありました。地に足を下ろして、という感じで。
武田 お父さんもきっと、にこにこしながら「いい仕事だ」と思いながらシイタケ栽培をしていらして―。
水上 本当にそう思っていたと思いますね。マイナスの思考はしていなかったと思います。つらいな、と感じたこともなく、一緒にいられることが楽しくて。

植林、枝打ちされ、適度に陽が入る林の中に、シイタケの原木が並ぶ。シイタケ栽培3代目となる息子、雄志郎さんとともに、森の中で作業が続く


この森に生かされている
武田 山の中で、こうして仕事をしていて、一番気にかけていることはどんなことですか。
水上 環境をどうやって保全していくか、守っていくか。その中で生かされているシイタケですから。中には矛盾点もありますが、そういう中で、克服しながらやっていきたいと。
武田 例えば、矛盾点というと、どんなところに。
水上 今、シイタケ菌を植える時に整形(型成)ゴマというものを使っていますが、その上面は発泡スチロールです。やはり環境負荷がありますから、菌の業者に発泡スチロールを生分解性のものに変えてほしい、と提言したりしています。なおかつ、経済性もなければいけませんし―。
武田 森林の整備もしているそうですが。
水上 年に2回ほど計画して整備に入っています。
武田 間伐していない山が増えているそうですが、なんとかしていかないと。
水上 そうですね。実際に斧を持って、チェンソーを持って、山に入らないと。いくら口で言っていてもだめですね。
武田 里山はいろんな宝庫。それが整備されていないことで無駄になってしまう、という状況は、なんとか変えていきたいですね。
水上 心ある人の中には、山に戻りたい人も増えていますから、楽しみにしたいと思っています。例えば、信州大学農学部の学生たちがよき理解者としてまた増えていけばと。
武田 菌を打つクヌギ、コナラは十分に足りていますか。
水上 まだまだ大丈夫と思います。植林もしていますし。一度伐採しても、クヌギで15〜20年、ナラで25年ぐらいで、またシイタケの原木に使えるようになります。どういうキノコを作るかをまずイメージして、それに合った植林をしていく。温度、水という刺激の量をコントロールしながら、キノコを管理していきます。夏場にどんな水をやるかで、キノコの大きさが決まってしまいます。
武田 年に3回収穫できるそうですが、春、寒い時期に採れるものと違う季節のもの、味はどうですか。
水上 寒い時期のものの方が、はるかにおいしい。キノコが重いですね。消費者は、ボリュームがある方を選びがちですが、同じ枚数でも重い方、ボリュームがない方を選びます。その方がおいしいです。
武田 キノコも、厳しい環境の中で「大きくなろう」と育った方がおいしい―。
水上 そうですね。その方が人間に厚みが出るのと同じように。
武田 シイタケが出終わった原木は。
水上 チップにして堆肥にして、地域の農家や自分のほ場に還元します。
武田 消毒もなく、まさに自然の力でできる。しかも、最後まで堆肥として利用できる。ゼロエミッション。全く捨てるところがないですね。
水上 山に助けられて―ということですね。

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