2005年3月25日放送 

【上伊那輝く経営者:42】 三洋グラビア社長 原敬明さん

新分野で躍進 経営理念は『即』

社員一丸 一貫生産

スーパーマーケットやコンビニエンスストアに並ぶ食品の包装パッケージ。鮮やかな色彩や目を引くデザインは、その商品の魅力をアピールする一つの顔だ。三洋グラビアは、この食品包装パッケージの印刷で知られている。次々に新しい商品が登場するこの業界で、スピードと品質を維持し、さらに環境にも配慮しながら、新しい印刷業として成長を続けている。
今回のいなまいニューススタジオは「輝く!経営者シリーズ」第42回。三洋グラビアの原敬明社長に聞く。

三洋グラビア社長 原敬明さん
三洋グラビア株式会社社長。今年創業45年を迎える会社の2代目社長として就任して7年。30歳の時、父親(当時の社長)から会社の就業規則を整備するように言われ、従業員という言葉を使わず「社員」に統一するなど、現在の会社の理念につながる基礎づくりに尽力。権威ではなく「経営者という職業」を意識しながら、若い社員たちをリードする。45歳。

地球環境にやさしい食品パッケージ印刷
武田 社員を従業員と呼ばないそうですが、どんな理由が。
「従業員」という言葉の、従うというイメージに抵抗感がありまして―。一方、使用する、使用者という表現にも抵抗感がありました。ですから、すべて社員である、と。経営は経営を分担する社員であるし、製造は製造を分担する社員。みんな社員じゃないか、ということで「社員」と呼んでいます。
武田 こちらでは、一貫生産方式で生産されているそうですが。
通常、印刷業界は、分担産業になっています。例えば、デザインを作る担当の会社はデザインを、と。我が社では、会社の中にデザイン、版、仕上げの工程まですべて一貫で行う方式をとっています。長野県内では、ほかにはないと思います。
武田 こちらで生産しているものは、食品パッケージ。中身は食品。ということは、印刷も気を使う必要がありますね。
1999年ごろ環境問題がクローズアップされてきました。印刷には通常は、トリエンなど有機溶剤を含んだインキで加工しますが、我が社では、それらを含まない水性インキを活用して、実際に製品を仕上げることを実用化した特許を取りました。ハイブリットグラビアと呼んでいます。
武田 これまで、水性インキが使われなかったということは、コストなど難しい面があったから―。
水性インキが普及しきれないのは、コストの問題や、品質上不安定要素がある、などの問題があります。それらを、独自の方法で解決して実用化しました。
武田 さらに、ニューハイブリットグラビアも開発されたそうですが。
ハイブリッドグラビアの段階では、一部有機溶剤を含んだインキも使っていました。それを完全に水性インキだけで仕上げていこう、というもので、2年ほど前から取り組んでいます。
武田 とにかく環境問題に前向きに対処しよう、ということですね。食品のパッケージは食べてしまえば、すぐにいらなくなってしまうもの。ごみになってしまいますから、環境に負荷をかけるわけにはいきませんね。
そうですね。
武田 しかも、すぐにいらなくなってしまうそのパッケージが「もの言わぬセールスマン」。お客様に「欲しい」と思わせなければいけないわけですから、やりがいもあるでしょうし、デザインも大変ですね。
私自身、このプラスチックのフィルムによる食品の包装が、地球環境を保全する意味では、他の何よりも最も省資源だと確信しています。というのは、このフィルムの厚みは、10ミクロン、20ミクロンという非常に薄いもの。資源としては非常に少ない量で、内容物を流通させることもできますし、中身を腐らせず、保存することもできる。そういう機能を発揮していますから、私たちの生活になくてはならない、優れた製品だと自負しています。
武田 リサイクルも可能―。
開発途上ではありますが、最終的に環境リスク、環境負荷を与えないように技術が進歩してきています。
武田 こちらの食品パッケージは、全国から注文が来ているようですね。
通常、印刷会社は注文をいただいて作る受注産業。我が社もそうでした。今は、せっかく自分たちが磨いてきた技術を多くのお客様の役に立てたいと、マーケティングをして、全国の食品メーカーにアピールさせていただいています。

「即」「即ち」
武田 社長室にも、「即」と書かれた額が掲げてありますが、これが、こちらのキーワード。
そうですね。経営の理念を掲げ、そこに社員の皆さんが集中して、それを大事にしながらやっていきたいという気持ちがあります。「即」には2つの意味を考えていまして、一つは、クイックレスポンス。スピードですね。もう一つは早いだけでわかりにくいと、お客様を混乱させてしまうことになりますから、早いと同時に「すなわち、こういうことです」ということをお伝えできるようにと。
武田 「即」というのは「即ち」でもある―と。
はい。
武田 24時間以内にお客様に返答するようにしているそうですが―。
一貫生産方式を取っていますから、注文を受けると、どのような工程を経て最終的に仕上げるかを社内で設計できます。これを各工程ごとに、毎日、受注残を管理します。それが、最大許容範囲を越えないように納期を対応しています。
武田 一貫生産方式だからこそ、可能ということですね。まさに「即」。

経営者という職業
本社内にあるデザイン室では、1日2アイテムのデザインを完成させることも。「入社6年目。デザインデータを印刷用に分色する作業をしています。デザインから入り、印刷も覚えてみたいと現在の工程に携わるようになりました。スーパーに行くと、食品売り場に立ち寄ってパッケージをじっと見てしまうこともあります」(デザイン室・白澤瑞穂さん)
武田 父親でもある先代社長は60歳で引退されたそうですが、最初から継ぐという意識はありましたか。
小学校のころ、作文に「将来の夢。印刷会社の社長になってお父さんの会社を大きくする」と書いているんですね。たぶん、自分の気持ちもあったでしょうが、父や母に「こう書きなさい」と言われていたということもあったと思います。家の中には、徳川家康など、歴史上のリーダーの本もありましたし…。継ぐ―という意識は、ずっとあったと思いますね。
武田 お父さんは、さりげなくそういう本を置いて、「リーダーに」と言っていたのかもしれませんね。創業当初はデザインが中心だったそうですが、そこから、どうして印刷業に―。
デザインを描いていると、印刷してみたくなる、ということでしょうね。ところが、印刷を直接してしまうと、それまで自分がデザインしてそれを買っていただいていた会社と同じ仕事をする。競争になってしまう。やはり、それは違う、と当時考えたようです。それで、違う分野で印刷、と考えた時、当時世の中に透明なプラスチックのフィルムが出始めていまして―。それに印刷してみよう、と。
武田 2代目として「経営者という職業」ととらえているそうですが。
会社というのはそれぞれの皆さんに、それぞれの役割があって、当然役割と同時に責任もあって仕事をしていくわけですね。社長が権限を使って、権力で動かすというのは限界があって、やがて行き詰まると思いますね。社長には社長の役割、実務があって、それを日々きちっとやっていく。それが大事だと思っています。
武田 それで、こちらでは従うという「従業員」という言葉は使わないということ。
そうですね。
武田 これからは、どんな経営を。
せっかく磨いてきた技術ですから、必ずお客様の役に立てると確信しています。この技術を伊那谷だけでなく、近隣のエリアにも広げていきたいと思っています。

【三洋グラビア株式会社】
南アルプスを一望する伊那市西箕輪の伊那インター工業団地内に3年前新社屋が完成=写真。7千坪の広大な敷地で、デザインから完成品までの一貫生産をする。伊那谷を拠点とした、全国でも有数の食品包装パッケージ専門の印刷で知られる。社員約120人。
◆本社工場伊那市西箕輪2415
◆0265・72・1511
◆http://www.
sanyo―gravure.co.jp/


製作:伊那毎日新聞社 All Rights Reserved (C) 2005  制作協力:Fieldwork