2005年2月11日放送 

小坂樫男伊那市長 伊東義人高遠町長 宮下市蔵長谷村長 伊那毎日新聞竹村編集長

特集市町村合併 伊那・高遠・長谷それぞれの今そして未来へA

わたしたちの未来へ 地方自治を考える

伊那市・高遠町・長谷村の3市町村による合併協議は大きな山場を迎えている。伊南地域の駒ヶ根市・飯島町・中川村でも、新市名や住民投票などに関心が集まり、住民として、また行政としても地域のために気を抜けない局面が続く。
いなまいニューススタジオは、先週に引き続き、小坂樫男伊那市長、伊東義人高遠町長、宮下市蔵長谷村長をゲストに迎え、武田徹キャスター、伊那毎日新聞・竹村浩一編集長が、地方自治のあり方、新市への夢などを聞いた。今月末には、すでに自立を決めている箕輪町長、南箕輪村長、宮田村長を迎える。
写真=(右から)武田徹キャスター。小坂樫男伊那市長。伊東義人高遠町長、宮下市蔵長谷村長、伊那毎日新聞日新聞竹村浩一編集長

小坂樫男伊那市長 伊東義人高遠町長 宮下市蔵長谷村長

行政改革をめざして
武田 住民説明会などが開かれていますが今、気になることは。
竹村 意向調査や住民投票についてです。住民とすれば、理解が深まらないまま進んでしまうのでは、という心配もあるのではと思いますが―。
小坂 理事者とすれば、合併をしなければやっていけない、という思いが皆あると思いますね。ところが、住民の側に立てば、なぜ合併しなければならないのか、と。そういう意識のずれがありますから、十分説明責任を果たした上で、今回の合併ついて理解をしていただけるかどうかに、キーポイントがあると思っています。
武田 新しい市を発足させなければならない一番の理由は、どんなところに。
小坂 財政問題ですね。国、あるいは地方の財政問題。民間は、合理化を進めてきましたが、役所はそういう点では、これまであまりしてこなかった。ですから、一つのポイントは行政改革。できるだけ行政経費を少なくすること。そして、住民サービスは多くやらなければならない。そういう中で、今回の合併が出てきた。
武田 これを機会に行政改革ができるのではないか、ということですね。
小坂 そうですね。でも、もちろん、合併する、しないにかかわらず、行政改革は進めなければいけないことです。
伊東 今回は、合併することが自立をすること、住民の幸せになること―という強い決意で進めています。昨年7月の住民意向調査では、町民の70%にご理解いただきました。この3市町村の合併については、町長、議会におまかせいただいて理解してもらっているということで、意向調査はしない方向です。
宮下 財政的に苦しくなることもありますが、地域を構成している人口、少子高齢化が急速に進んできています。現時点でのサービスを維持できるなら、合併しない方向もありますが、行政の担当者として将来を見た時には、どうしても合併を選択しなければいけない。また、行政改革はもちろんですが、地域内分権という形をとっても、同時に地域の組織も近代化しなければいけません。住民の意識改革のチャンスとしてとらえても、合併というハードルを越えていかなければならないと思っています。
竹村 賛成、反対を問うための意向調査だけではなく、住民説明会のアンケートでいろんな声が出てきたように、もっとオープンにして、住民の声を聞く機会として、その声と声がぶつかる機会もつくれたのでは、という気もしていますね。

伊那・高遠・長谷それぞれの魅力
武田 それぞれ、合併しようという相手に、どんな魅力を感じているでしょうか。
小坂 まず高遠といえば桜。天下一の桜ですね。それから、高遠には歴史、文化があります。そういう中で、伊那市としては、とてもかかわりの深い地域ですね。そして長谷村は、伊那市から毎日見上げている南アルプス。鋸岳から仙丈、塩見岳も長谷村ですから、あの素晴らしい自然をどうやって生かしていけるか―ということだと思いますね。そして、秋葉街道が通っていますから、中尾歌舞伎のような郷土芸能もあります。これから、とても魅力的な町であり、村であると思っています。
伊東 伊那市は、伊那谷の中核都市。商工業、農業も発展しているということですね。特に、高遠町では、買い物客の60%が伊那市、通勤も伊那市を中心に60%、通学は40%、病院へは45%が伊那市へ行っています。伊那市の恩恵を受けていますね。そういう意味ではとても一体感が持てます。さらに、昭和40年代以降、高遠町から伊那市へ出た人が約3600人います。本当に親近感が持てます。長谷村は、雄大な南アルプスと三峰川。長谷村へ行くと、癒される感じがします。それに、長谷村と高遠町では、地縁関係もとても多く、こちらにも親近感を持っています。
宮下 テクノバレーという言葉に象徴されるように、伊那市は工業が発展してきていますし、商業についても商域が広がる中で、長谷村も恩恵を受けています。農業についても、新しい感覚で進められ、それぞれの産業の振興という点が魅力ですね。中心地としても環境にも恵まれていると思います。長谷村からは、ダム建設や災害などによって伊那市に移住した人も多くいます。そういう点で、縁者が多い地域。将来に希望が持てる地域だと考えています。高遠町は、歴史と文化の町。桜の町として知名度も高いですね。歴史的には、高遠町と長谷村は、運命共同体として、緊密な関係を続けています。最近では、新しいまちづくりへの意気込みがとても活発になって、魅力がある町ですね。
武田 例えば、ドレミを西洋から持ちこんだ伊沢修二さんが高遠出身ということは、長野県人でもあまり知らないのではないかと思いますね。その文化が一緒になる。そして、素晴らしい南アルプス、三峰川源流がある長谷村。そして、商工業の中核・伊那市。この3市町村で新しい市が誕生したら、物語が作りやすい市になるんじゃないか―というイメージがわきます。
小坂 それぞれの市町村でいる時よりも、3つになれば、より大きな力になると思いますね。
竹村 三峰川が一つの大きなポイント。三峰川は本当に魅力ある川だと思います。住民アンケートの中にも、この自然に対する期待がたくさんあり、伊那市在住の人で、高遠や長谷の歴史、文化、自然に期待する声も聞きました。利水、災害に関しても、3市町村が一体となって取り組まなければなりませんが、三峰川を軸に、効果的にいく可能性もあると思いますね。

新市に描く「夢」
武田 新しい市に向けて、それぞれ、どんな夢をお持ちでしょうか。
小坂 『二つのアルプスに抱かれた自然共生都市』。中央アルプス将棊頭山から、南アルプスの頂上まで、この2つのアルプスに抱かれた都市というのは、日本にはありません。世界にもないと思います。そういう意味で、とても自然に恵まれた、素晴らしい新しい市ができるのではないかと思っています。そして、その間を流れる三峰川。伊那市は、三峰川の大きな恩恵を受けています。上流のダムによって洪水の心配がなくなり、また、伊那市の水田3千町歩のうち、約2千町歩が三峰川の水系の水によってつくられています。しかも、川くだり米と言われて非常においしい。そういった自然が素晴らしい都市だなあ―と言われるような市にしたいと思っています。
武田 これほど恵まれたところは、日本でも少ないですよね。市長もハチが好きだそうですが、そうした自然、文化を、これからは大事にしていきたいですね。
小坂 そうですね。これからは、それがとても重要なファクターになると思います。
竹村 広大になれば、意思疎通のために道路整備が必要になるなど、大変なことも出てくると思います。そういう点での無駄に気を使う必要もあると思いますね。
伊東 『地域の一体性』。それぞれの皆さんが一体になってやれることが夢です。通勤、通学、買い物がすべて伊那市へ集中している今、すでに伊那市と一体となっています。その上で伝統、文化も共有できる。合併して本当によかったなあ、と言えるような新しい市にしていけたらと思っていますね。
竹村 地縁、血縁だけでは、まとまらない部分もあるでしょう。これからは、そのすり合わせが大事になっていくと思いますね。
宮下 『中核都市としての発展』。市が大きな目標を掲げて進んでいかなければならないと思っています。南信地域の中核として、モデルになるような発展ができれば、一つの流れになれると思います。それには、住民の皆さんも、新しい市を作るんだ―という意気込みを持って、一緒にやっていただければと思っています。それが大きな合併の目標ではないかと。それと、三峰川上流域の荒廃を守ることにも積極的に取り組みながら、母なる川、三峰川の清流が保たれ、新しい市の原動力にもなればと思っています。
竹村 合併すれば、いかにも信州らしい一つのモデル地域になりそうな部分はありますね。そのためにも、住民と理解を深めながら、十分コミュニケーションを図っていくことも必要だと思います。
小坂 長い歴史の中では、合併は一つの契機に過ぎないと思っています。そうした中で、本当に3市町村の住民が一体となって新しい市を作っていくという夢を持って、この合併に取り組んでいきたいと思っています。
伊東 合併してよかった―と言われるような市になるよう、努力していきたいですね。そのために、合併した時にはこんなふうに、という夢を、地域の皆さんにお伝えしているところです。
宮下 自然に恵まれた村、今までは小さくまとまっていましたが、この合併で大きな組織の一員になろう、ということです。誇りある地域になれば、市の中で大切な存在に当然なってきます。合併が一つの地域づくりの中心になる、また、皆で地域づくりをすることが、新しい市の発展にもつながる。それが、ふるさとを守ることになると思っています。
竹村 この合併のきっかけは、財政問題でした。合併する、しないにかかわらず、行政も我慢しなければならないことが出てくると思います。住民も、行政に依存するだけでなく、我慢することが出てくるでしょう。自分たちで知恵を絞っていかなければいけない時代になっていくでしょうね。

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