2005年2月5日放送 

小坂樫男伊那市長 伊東義人高遠町長 宮下市蔵村長

特集市町村合併 伊那・高遠・長谷 それぞれの今そして未来へ

首長が語る『合併』 三峰川水系に新しい未来を描く

全国で市町村合併が論議され、行政として、住民として、あらためて「地方自治」について考える契機となっている。合併する、しないにかかわらず、自分たちが住む地域の未来像をどう描くか、どんな光を見つけ得るかを考えることは、われわれ一人ひとりに課せられた責任と言い換えてもいいだろう。
いなまいニューススタジオでは、現在合併に向けて協議を進めている伊那市・高遠町・長谷村から、小坂樫男伊那市長・伊東義人高遠町長・宮下市蔵長谷村長をゲストに迎え、武田徹キャスター、伊那毎日新聞の竹村浩一編集長とともに、合併に対する思い、新しいまちづくりへの夢を2回にわたって聞く。また、2月末には、自立を決めている箕輪町、南箕輪村、宮田村の各首長をゲストに迎え、自立への思い、地方自治について聞く。
写真:武田徹キャスター、小坂樫男伊那市長、伊東義人高遠町長、宮下市蔵長谷村長、伊那毎・竹村浩一編集長(フォレストコーポレーション『木組みの家』で)

小坂樫男伊那市長 伊東義人高遠町長 宮下市蔵長谷村長

「6」から「3」へ
武田 6市町村での合併研究から、この3市町村へと、紆余曲折があったわけですが、今の心境はいかがですか。
小坂 6が4になり、現在の3になったということで、なかなか合併というのは難しいなあという思いですね。南箕輪村がこの合併に参加しなかったのは、地形的に見て残念に思っています。でもこの3市町村は、これまでの住民の歴史的なつながりもありますし、三峰川を源流とする互いの行き来もあります。そういう意味では、この3市町村の合併は比較的仲良く進んでいると思いますね。
伊東 合併というのは労力が必要だなあというのが率直な思いです。平成15(2003)年から、計170回近くの説明会を開いて、ようやく町民の皆さんに理解していただけたかな…ということで。6市町村の合併研究のころは、いい雰囲気ではなかった面もありましたが、この3市町村の合併協議は、非常に打ち解けた雰囲気の中で進んでいますので、落ち着くところに落ち着いたかなあと。
宮下 合併は、ある程度の大きさで進んでいくのが望ましいという考えでした。個人的には、6市町村の合併が整うことが、広域的な今までのつながりの中でも望ましい、という希望もありました。今、3市町村になったわけですが、これまでの6市町村、4市町村での協議が無駄ではなかったと思っています。3市町村が合併に向けて協議する上での基礎的なことを勉強してきたことが生かされていると。

「地域自治区」「協働」をキーポイントに
武田 新しい市に向けての将来像。キーポイントになるのは。
小坂 特に、長い歴史を持ったそれぞれの3市町村。その中でも互いに風土も違い、風習も違う。それが急に一緒になることには、なかなか抵抗があるわけですね。そうした中で、今回は高遠、長谷には「地域自治区」を設けて、地域の声を新しい市に反映する組織を作ることになっています。今回の合併特例法の改正で設けられたものですが、期間は10年間。高遠、長谷には「総合支所」を置きます。その代表、区長(特別職)を置いて、その下に各団体から委員を集め、地域協議会を開催しながら、地域の声を区長を通じて新しい市長に伝えます。新しい市長は、その地域の重要な事項については、あらかじめ地域協議会の意見を聞かなければならないことになっています。そうして、10年かけてゆるやかな融合を図っていく―ということを決定させていただいています。
武田 高遠、長谷の皆さんは、どちらかというと、伊那市にのみこまれてしまう―と心配する声もあるかもしれません。そういう声にこたえるためにも、「地域自治区」を設けるということですね。
小坂 現在の伊那市の中にある7つの支所にも「地域自治区」が置かれます。今までも、自治会やPTA、社会福祉協議会などと任意の協議会を設けていましたが、新市ではあらためて、きちんと法律で定められた「地域自治区」を置くことにしています。そして、地域の声をまとめて、市へ提案していただこうと。地域の声が届きにくくなるということを防止するための組織をきちんと作ろう、ということです。
竹村 これまでは、住民の側も、どちらかというと行政依存だった面があったと思います。合併議論をきっかけに、住民自治そのもの、住民自治を充実させようということを考える機会になればと思いますね。また同時に、行政の意識改革として、前例にならってきたものを排除して、新しい取り組みをしようという機会に―。
小坂 今までは、すべて行政がやっていくという社会だったわけですが、これからは住民が積極的に行政に参加していく時代になると思います。伊那市もそうですが、これからは住民との協働をキーワードにしています。NPOや地域の団体が行政に深くかかわって、今まで行政におんぶしてきたことを、自分たちでやろう、という団体も出てきているので、そうした団体をまとめていくのに、この地域協議会が役割を果たすことができればと思っています。
武田 財政難が当然予想される中では、住民たちも、自分たちのことは自分で―という動きがなければやっていけなくなりますね。例えば、長谷村では、合併に反対という立場の皆さんの大きな理由はどんなところに。
宮下 財政的な問題。それと、大きなところに吸い込まれて、ふるさとがなくなってしまう―というような心情的な問題があると思います。
武田 そのあたりを「地域自治区」で吸い上げていこう、ということですね。

三峰川水系で合併を考える
武田 今回の3市町村、風土も歴史も違いますが、同じ三峰川、天竜川の流域になりますね。合併は流域ごとに、という声も聞きます。三峰川でつながった3市町村。これは、合併につながる大きな要素になり得ると思います。
竹村 例えば、諏訪湖から遠州灘までの天竜川水系で考えると、文化、歴史など、とても自然な流れで考えることができます。さらに、ここには三峰川水系がある。自然、風土、歴史、文化…川を伝わって流れている歴史がありますから、合併という問題を別にしても、これからは水系が一体になって、いろんなことを進めていけば、とてもいいと思いますね。これからは、『水系』というのが一つの大きなヒントになるように思います。
武田 そうですね。『水系』を中心に進めることで、スムーズに行くことが多いと思いますね。この三峰川水系も、プラスの方向に生かしていくことも大事ですね。

『豊かな自然 あつい人情』『地域内分権』『地域性を生かしたまちづくり』
武田 新市に向けて合併協議を進める中で、一番主張したいことはどんな点ですか。
小坂 「豊かな自然あつい人情」これを基調としたいと思います。伊那市から毎朝、毎夕眺める南アルプスの自然、それから、そこを流れる三峰川。本当に、この新しい市は自然が豊か、しかも、それを守っていかなければならないと思っています。それから、この3市町村の住民、そして伊那谷の住民は、もともとあつい人情を持っていると思うんですね。それを大事にしていきたいと思います。
伊東 「地域内分権」です。一体感のある合併、思いやりのある合併をしたいですね。大きな伊那市と一緒になると、のみこまれてしまう―という声もある中で、地域がさびれないように、地域でやってきたことが守れるように、「地域内自治区」を活用して、地域の権限が守れるようにしていきたいですね。そして、地域の皆さんが合併前とあまり変わらない―と感じることができるように、「地域内分権」を進めたいと思います。
宮下 「地域性を生かしたまちづくり」です。長谷村は全くの山村、三峰川の水源地域であることに大きな一つの責任があります。もう一つは、南アルプスに象徴される自然を有効に活用しながら、山岳観光だけではなく、広域的な観光につなげることができたらと思っています。また、農村であるだけに、高齢化が進んでいます。そこでは、福祉と健康が重要になってきます。村では、これまでも、そこに力点を置いて進めてきましたので、一つの農村のモデルとして成り立っていく形で発展させ、さびれていかない地域として、生き残れる、特色あるまちづくりを進めていくことが大事と思っています。

説明責任を果たしながら
武田 住民の声は、どうでしょうか。
竹村 昨年、伊那市で開かれた住民懇話会の会場でのアンケートによると、「わからない」という声が多い気がしますね。合併する理由がわからない―という声もありますし、どうして合併に反対するのかがわからない―という声もあります。反対している人の中でも、わからないから反対―という場合が多いのではと思います。賛成、反対という以前に、まだ十分理解されていないのではないか、という印象もあります。メリット、デメリットを明確に比較して、財政、環境、教育、文化、福祉などの各分野で示すことが必要で、これから考察しても、まだ遅くないと思います。
小坂 本当に、わからない―というのが実態だと思いますね。私自身も、将来のことはわからない面もありますし。そういう意味で、なぜ今、合併なのか、合併した場合にはどんな市になるか―という未来像を示さなければいけない、と思っています。現在、市内で開いている住民説明会では、ビデオなどを用意して詳しく説明していますから、だいぶ理解していただけているという感触もあります。やはり、説明責任をきちんと果たさなければと。
武田 これを機会に自分の問題としてしっかり考えたいですね。

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