| 武田 |
これまでに、伊那谷を中心に徹底的に歩いてきた―。 |
| 松島 |
そうですね。一つの場所を徹底的にきちんと歩いてみると、その基本原則は地球全体に必ず共通性を持っています。 |
| 武田 |
実際に歩いて、危険なところにも家屋があると感じることも…。 |
| 松島 |
最近になればなるほど感じますね。宅地化が進んでいくのを目の当たりに見ていると、そこに住む人は、その土地の成り立ちなど全く知らない。危険な斜面ということがわかっていながら、または土石流が何度も発生していることがわかっていながら、そこに宅地造成していくことは、やや今の法整備が不備なんじゃないか、と。もう少しきちんとしていかないと、多くの人命にかかわることにつながる、といつも思いますね。 |
| 武田 |
そういう中で、自分たちで、自分たちが住む地域の危険個所を調べた地区があるそうですね。 |
| 松島 |
岡谷市の三沢という地区です。糸魚川静岡構造線の影響を受ける地域にあたります。地震はもちろん、土砂災害への警戒など、いざ災害が起きた時、どういうところが安全であるかを調べ、「よいところ地図」を作りました。この地域の人が、家族、家族の単位でちゃんとわかっていきましょう、と。例えば防災に役立つ空き地、水道が止まった時にどこにわき水があるか…などを記していますね。 |
| 武田 |
「問題点地図」というのは。 |
| 松島 |
崩れたら大変な石垣、交通事故注意の交差点、液状化しやすい場所…など、基本的な防災のための知識を皆が共有しよう、ということですね。それが、地域力を高めるための大事なものだと。 |
| 武田 |
もし地震がきたらどこに行けばいいかわかっていれば、全く対策が違いますね。 |
| 松島 |
そういうことですね。自宅にいた時、職場への往復でどんな道を通るか、職場の中ではどうか…何か起こった時、どうやって回避しなければならないか、というシミュレーションが常にないと、すぐに行動に移せませんね。こういうことが、今は抜けているんです。家ではサッシで閉めきられて外と遮断され、自動車で移動していて、自然に向き合っていないんですね。身の回りの山がどうなっているかとか、すぐ近くにどんな川が流れているか―そこにあまり興味関心がない。そういうことが、今、非常に薄くなっているんです。 |
| 武田 |
あまりにも便利な世の中になって、回りがどんなふうになっているか知らない人が増えすぎているかもしれません。 |
| 松島 |
まさにそうですね。特に、戦前に子ども時代を過ごした年代と、現在働き盛りの年代とのギャップはそこにあるんですね。若い世代は、都市化され、河川は完全に堤防で仕切られているという中で育ってきています。大切なのは、住む場所、働く場所など、自分たちがいる場所のことをしっかり認識することですね。それには、どうしても自分の目で確かめないといけない。それが第一歩であるし、すべてであるとも言えると思いますね。 |
| 武田 |
私自身、小さな畑のすぐ脇にあった川が鉄砲水のようになって、周囲の土が砂だらけになってしまった経験があります。地元のお年寄りに聞くと、過去に3回、鉄砲水があったという話でしたが…。 |
| 松島 |
今は、小さな川があふれた、とよく聞きますが、調べてみると単に排水路に落ち葉が詰まっていた―ということもあります。これは、自分で取ってみれば、すぐにわかることですが、それができない…。先端技術はよく知っていても、そういう原始的な知恵がどんどん失せていくということでしょうか。 |
| 武田 |
生活の基礎、知恵ですよね。 |
| 松島 |
そうですね。ですから、子どもには野外で冒険させれば、幼児のうちから興味関心がついていきますが、野外では危険が伴うからとなるべく公園に行く。そうして、身の回りの野外への関心がどんどん薄れていってしまいますね。 |
| 武田 |
子どものうちから、人が手をかけて安全にしている公園だけでなく、身の回りの野外にも出かけて、危険と安全がわかるようにしていかないと。 |
| 松島 |
そうですね。どうしてこんなところに家が、どうしてこんなところに道が―という場所をたくさん見ますね。今回、中越地震でたくさんの地盤災害がありました。崩れた場所を見てみると、災害が顕著なところは、道路造成、宅地造成したところがほとんどでした。 |
| 武田 |
地震ばかりでなく、川のすぐ近くに家を建てたり、危険なこともたくさんあります。人間が自然を支配できたような思想を変えていかないと…。 |
| 松島 |
今は、川は堤防の間を流れる、という仕組みになっていますが、ほんの数十年前、堤防がなかった時代は、川は自由に氾濫できたんです。それを仕切ってしまったことによって、いろんな現象があるわけですが、それに対する社会教育が非常に足りないと思いますね。 |
| 武田 |
とにかく、我々がどんなところに住んでいるか、確かめることが大切ですね。 |
| 松島 |
自分の身の回りをどんどん歩き回ってほしい。そこで「ここに亀裂がある」と、もしかしたら発見できるかもしれません。 |