| 武田 |
小松さんはハチを媒介にして、多くの人と交流を広めてきたそうですね。 |
| 小松 |
例えば緑塾。これは、出身の上伊那農業高校で始まったものですが、私も講師として「女王蜂の世界」という話をしました。 |
| 武田 |
養蜂業を始めて何年になりますか。 |
| 小松 |
高校を卒業してからですから、40年以上になります。 |
| 武田 |
その頃と今では、蜜の採取などずいぶん変わりましたか。 |
| 小松 |
すっかり変わりました。昔は、伊那谷といえば、レンゲの花がたくさんありました。今はほとんどレンゲの花を見ることもなくなって、ニセアカシアが主流になっています。山に行けばトチの蜜などです。 |
| 武田 |
今、ミツバチは他にどんなところで利用を―。 |
| 小松 |
イチゴ、メロン、スイカなど、今はハウス栽培が盛んになりました。昔と違って、チョウが少なくなりました。ハウスの中では、今はほとんどがミツバチを使って受粉、交配していますね。 |
| 武田 |
池上さんが飼っているミツバチ、養蜂業を営む専門家から見ていかがですか。 |
| 小松 |
人間の世界で言えば、貯蓄豊かですね。生存競争が激しいですから、個々の巣箱は全てライバルになって―。 |
| 武田 |
成績が悪くなると、気性も変わってきますか。 |
| 小松 |
蜜があるハチ、無いハチは本当に極端に違います。蜜が無い時は、巣箱の蓋を開けると怒って飛び出してきます。 |
| 武田 |
今日の池上さんのハチは穏やかでした…。 |
| 小松 |
そうですね。これが池上さんの経営のいいところでしょう。 |
| 武田 |
小松さんは蜜蝋を使ってウサギなどの置き物を作っているそうですが―。 |
| 小松 |
ミツバチの巣は全て蜜蝋でできています。スズメバチなど他のハチは巣を木の皮などから作りますが、蜜を大事にしまっておかなければならないミツバチはこうした蜜蝋で巣を作ります。ミツバチの貯蓄性がうかがわれるところですね。 |
| 武田 |
危機管理の面ではいかがですか。 |
| 池上 |
ハチの巣箱を開けて、振動を与えたりすると、危機を感じて刺します。巣箱に入っている枠でハチを一匹つぶすと、そこにさっとハチが集まってきて刺します。自己防衛ですね。巣の入り口にスズメバチなどが1匹来た時は、門番役のミツバチが働きバチに知らせ、働きバチが防衛に出てきます。そして、ミツバチが球状になってスズメバチを囲ってしまいます。文献で調べたところ、その球の中の温度は42度にもなっているようです。 |
| 武田 |
外敵が来ると、みんなで囲んで温度を上げてやっつけてしまう…。 |
| 池上 |
自己防衛です。スズメバチがたくさんやってくると、巣から出てきたミツバチがどんどん食べられて、30分もすると死骸が山になってしまいますが…。ミツバチは、外敵に対しては非常に敏感。企業でも自己防衛をしなければと言ってきました。 |
| 武田 |
それと危機管理。何かあった時は自分で気がついて対処する方法を見つける、ということですね。 |
| 池上 |
そうです。常にどういうことが起こるだろう、と考えて経営することが大事だと思います。 |
| 武田 |
ミツバチはよく働く、と言われます。そういうところからも学ぶことが―。 |
| 池上 |
ミツバチは、生まれてからの日数によって職責が違いますね。産まれたばかりのミツバチは、3時間ほどすると巣の中の掃除を始めます。次に、自分の後輩のハチに、最初はローヤルゼリーを少しだけ与えて、続いて花粉と蜜を与えて育てる仕事をします。そしてもう少し経つと、女王蜂の食事の係を、次に蜜蝋を出して巣を作る仕事をします。20日ほどすると、30分ほど試験飛行をして自分の巣を覚えて、花粉や蜜を集めることをします。働きバチの生涯はわずか40日ですが、じっと観察していると、夏は薄暗いうちから働いて、夕方暗くなるまで働いています。女王蜂は、多い時は一日に1500個から2000個も卵を産んでいます。 |
| 武田 |
女王蜂もそうやって自分の役割を果たして働いているわけですね。 |
| 池上 |
夏の夕方、「今日は夕立が来るよ」と言うと、「まだ陽が当たっているから大丈夫だよ」と言われる。すると、30分ぐらいすると夕立が来るんですね。どうしてわかるかというと、夕立が来る少し前になると、ミツバチがどんどん巣に帰ってくるんです。 |
| 武田 |
ハチがそれを予知しているということ。 |
| 池上 |
そうだと思います。危機管理ですね。 |
| 小松 |
そうですね。雨が降る時には、本当にハチたちは急いで帰ってきますね。 |