2004年3月27日放送 

有賀功さん(南箕輪村) 春日嗣彦さん(高遠町) 竹村浩一報道部長

シリーズ市町村合併を考えるG
市町村合併 わたしはこう考える

合併は、あなたの問題、わたしの問題 新たな一歩を前に

上伊那中東北部の6市町村で模索されていた合併の枠組みは、昨年、辰野町と箕輪町が自立を表明したことで、新たな展開が始まることとなった。今年2月、高遠町と長谷村が伊那市に合併研究について申し入れ、伊那市は、南箕輪村も含めた4市町村での枠組みで考える方向を提案。合併と自立に揺れていた南箕輪村は、この提案を受け入れ、4月1日、4市町村は合併を前提とした新たな一歩を踏み出す。
国が一応の期限としている平成17(2005)年3月まであと1年。行政側の研究努力、模索が続く中、住民側でも、さまざまな取り組みが継続されている。合併か、自立か。いずれにしても、そこに住む住民一人ひとりに深くかかわり、さらに、次代にも重くかかわっていく問題に違いない。
今回のいなまいニューススタジオは、合併問題について考える行政の研究会、懇話会の公募委員として、この問題にかかわってきた2人の住民をゲストに迎え、伊那毎日新聞・竹村編集長とともに、これまでの経験を踏まえて、今思うことを聞いた。

春日嗣彦さん
高遠町合併研究会公募委員(一昨年)。その後、高遠町の自立をめざす会を立ち上げ、現在代表。3月28日には、独自の村づくりを実践する栄村の高橋彦芳村長を迎え、講演会と円卓会議を開く(午後1時30分〜町総合福祉センター)。高遠町在住

有賀功さん
南箕輪村合併問題懇話会公募委員(昨年)。3年前に故郷の南箕輪村に戻る。地元の郷土誌などへ、郷土に関する執筆も

公募委員として
武田 公募に応募したきっかけは。
有賀 南箕輪は村としてできてから、明治以来130年になるわけですが、そういう歴史あるところを、この数カ月の検討で軽はずみに合併ということがいいのだろうか―基本的には、そこから発想しまして。調べてみると合併という話は、今回の合併は国が発意して、いわば押し付けて的な面もありますし、一方、村民はというと、それほど関心があるようにも見えない―。自分なりに勉強もしながら、そのあたりを、あれこれ探ってみようかと考えたわけです。
春日 一昨年8月に町で公募委員を含めた合併研究会ができ、公募委員の一人として入れていただきました。当初は、野次(やじ)馬的関心で、合併に反対でも賛成でもなく―。そこで、仲間たちと国や財政のことを研究しながら、「本当に出来ないのだろうか、このままやっていけないのだろうか」「自治というものをないがしろにして、このまま進めてしまっていいのだろうか」というのが起点になって、自立をめざす会をつくりました。
武田 一般的な人の関心の度合いはどうでしょうか。
竹村 以前に比べれば、関心は薄れているような気もしますね。
有賀 関心がない―ということもありますが、「何で急に合併なんだ」という一種の戸惑いが強いと思います。そういう「なんだかわからない、困った」というものが投票の結果(住民意向調査の)にあらわれたのではと思っています。かといって、心からどうしても反対か―というと、そうでもない人も多いのではないか…とも思いますし。
春日 高遠町は、50年前の昭和の大合併ですでに合併を経験しています。旧東高遠、旧西高遠と、周囲の当時の村との合併がありました。従って、当時の村の皆さんの合併のとらえ方と、西東地区(現在の街部)のとらえ方とが違うので、全体で、高遠町をどうやって作っていこうかという論議の広がりが、なかなかしにくいと思います。

行政の進め方に思う
武田 行政の進め方については、公募委員の皆さんは、どんな意見でしたか。
有賀 今回の村の合併推進の根拠は、財政関係が予想以上に厳しいことなどがあげられています。財政が厳しいということは、おそらく他の町村、だいたい同じような状況なのではないかと思いますね。そういう中でも新たに自立の道を選択する町村もありますし、自立を決めていて、今に至っても、それを変えていない―というところも多い。そうすると南箕輪が特別困ることがあるのか―ということがあります。いずれにしても、ここでの動きが少し唐突すぎるという印象があります。それがやむを得ないとしても、何らかの対策を考えるべきなのではと思っています。
春日 高遠町に限らず、首長や議会は、今回の合併の後にどういう国の姿があるのか、あるいはそれについて、自分が預かる町村について、どういうふうに持っていけばいいのか―という見識をまず示さなければいけないと思います。そのことを、合併研究会などに聞いても、なかなか返ってきませんでした。もっと資料を―と言いますと、住民の人に詳しい資料を提示してもあまり見ないだろう、とあまり提示されていません。そういう意味で、賛否を超えて閉塞(へいそく)感が強いと思います。

関心を高めるために
武田 これから、もっと関心を高めていくには、どうしたらいいでしょう。
竹村 新聞紙上に合併に関する記事が、ほぼ連日掲載されていますが、昨年は、住民の間の動きについての記事が多かったように思います。それが今年に入ってからは、ほとんど情報は行政単位での出来事。もっと住民側の動きが出てきてもいいのではと感じます。
春日 身近な保育料や、下水道をはじめ、学校や商店街の問題など、いろんな項目があると思います。合併とは―と難しくとらえないで、自分の仕事のこと、友達のこと、いろんなことを考えながら、身近な例から考えてみたらどうでしょうか。住民が疑問に思ったら、どんどん役場の職員に聞いてみる。そういうところからキャッチボールが始まる要素もあると思います。
有賀 村は、自立のための研究委員会を発足させようとしていたわけですが、そこでは経費の節減、歳入を増やすにはどうしたらいいか、生活にまつわるさまざまなこと…それを全部、自分たちの目で見直して、基礎からもう一度村政を構築し直そうということでした。これがその通り進んでいれば、ものすごく住民の関心をかき立てて、村民がこぞって今後の村の進み方を考えることに参加する機会になった可能性があると思います。今回、合併に向けた研究を進めるなら進めるとして、自分たちの目で村を見直す委員会みたいなものをやはりやる、というのがいいと思います。その場合、村などが音頭を取って組織的にやらないと、なかなか動かない。具体的な問題について、村の中で議論する場所を村が設定する、これだと思っていますが―。合併したら、いろんな問題が解決されて、楽土がにわかに出現するわけではありませんから、同じようにいろんなことを苦労していかないと、これからは、そうなっていきませんから…。だとすれば、どちらの道を取るにしても、そうしたことを基礎からやり直さなければならないと思っています。

これからの行財政改革に思う
武田 今、非常に財政が厳しい時代。行財政の改革をするための合併でもあると言われていますが。
春日 同じ結論を出すのに安上がりにすればそれが改革なのか、そうではなくて1回で2回、3回分のことをすればそれが改革なのか…。一つ言えることは、今まで役場にお願いしてきた事柄について、大きな部分を自分たちで担わなければいけない―ということですね。単に数字で見て、住民一人あたりが安くなったからといって、それが効率化とはとらえていません。
有賀 地方住民としては、自分の身の回りのことを考えると同時に、国や県の改革に対しても目を向けて、どんどん発言していかないと。箱物みたいなものが依然として、どんどんできてくるわけですよね。そういったことは、どこかで止めさせなければいけないと思います。今回の合併特例債というのも、借金ですから、全体の改革の中では引き締めていかないと、後に悔いを残すことになるのではと。住民が皆で声を出して、皆で対処していくべきところだと思っています。また、首長や議会が「こういうことはできる」「こういうことはできない」ということを、はっきり示すべきだと思いますね。そういう青写真をもらってみないと、住民は具体的に考えにくいと思います。

税金の使われ方にも関心を 今、一番大切なことは
武田 公共事業については。
春日 これまでは箱物が中心で、単にお金を落とすというところが強調されてきましたが、これからは、お金が地域内で循環することを考え、地域内にできた箱物を活用しなければ。介護、学校、クラブなど、人と人とのふれあいから生じるところに、もっとお金を傾注する必要があると思います。
有賀 新聞にありましたが、公共事業で5坪のトイレを造るのに予算が1780万円だという。1坪360万円のトイレ…。自分のお金だったら、絶対にしないと思いますね。公共のお金の使われ方が実に軽い。ぜひ、そのあたりを考えてほしいと思います。
武田 税金の使われ方については、日本人は今まであまり関心がない部分がありました。これを改めないといけないですね。最終的には、合併についてどんな決め方をしてほしいと思いますか。
春日 小学生や中学生の皆さんに、大人がきちんと自分の責任を示すためにも、住民投票が適切だと思います。また、議会の議決を終えるまで、住民の意思を通すチャンスがあるので、そのことを忘れてはいけないと思います。
有賀 村民が基礎から話し合える場を、時間が足りないとしてもぜひ、つくってもらいたいことと、議会で決めると言っても、議会は住民の代理として置かれているものですから、住民投票を躊躇(ちゅうちょ)すべきでないと思っています。
武田 合併に関して今、一番大切と思うことは。
有賀 「自分たちのことは自分たちで決めよう」ということ。昨年、合併懇話会でやらせていただいたことは、村としても大きな実績になっていると思います。それを生かして、それに続くように、これからの仕事もやっていただきたいと思っています。
春日 「自治体はスゴロクの目ではない」ということです。上伊那北部で言うと(枠組みを)6だとか、4だとか、数合わせのような気がしています。何のために合併が必要か、必要でないのか、皆で考えなければいけないと思っています。
竹村 「愛着が知恵を」ということ。すでに自立に向けて動いている町があります。その動きを見ていると、自分たちの地域に、ものすごく愛着を持っていると感じます。いろんな層の人が、それぞれの場所でがんばっている―ということも伝わってきます。新年度の予算にも反映されて、ユニークな知恵と工夫があります。いずれにしても、自分のところに愛着を持てば、知恵で社会は動いていくと思います。
武田 合併は我々の問題。あなたの問題でもあるし、私の問題でもある―ということですね。


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