| 武田 |
昨年12月に提出された意見書のポイントは。 |
| 野口 |
我々も驚きましたが、過去の災害に対して、新聞記事などはありますが、データを県が持っているかというと、必ずしもそうではない。過去にどんな災害があったのか、ちゃんとおさえておかないと、どこに集中的に工事をなすべきかがわかりませんね。データを整理して、地域住民に説明していくことが必要で、地域住民もその中で判断していく―ということになります。 |
| 武田 |
今までの公共事業では、必ずしも、そういった記録に基づいていなかった…。 |
| 野口 |
細かく、教訓として生かせるようなものが十分整理されていないということですね。それが現状なんです。民間の開発が、そうした過去のデータに関係なくされるのではなく、県がデータに基づいて、危険地域では開発を止めさせるなどの勧告ができるような、そういう基礎的なデータの整理が必要―と。 |
| 武田 |
考えてみれば当たり前のことですね―。 |
| 野口 |
はい。それから、大筋として、ダムに頼らないで、水田や森林、ため池などの自然の力を利用したり、地域住民も参加して防災対策を考えていくなど、ソフト的な問題も含めてやっていかないと。ダムを造れば万能というわけではないということです。基本的には、ダムなし案を支持しましたが、ある程度住民も納得した形で早急に代替案ができることが必要です。 |
| 武田 |
流域住民の皆さんの参加が重要になってきますね。 |
| 野口 |
そうです。一番安全性にかかわるのは地域の住民ですから。ため池や棚田は、かつて水を貯留するなどの役割を果たしてきました。それが今、どんどんつぶされたり、放置されたりしています。これらを地域住民と協働しながら維持管理していくことによって、その保全、保水機能も活用した総合的な対策が必要ですね。 |
| 武田 |
ということは、縦割りではなく、役所でも総合的にやっていかないと―。 |
| 野口 |
そうですね。この再評価委員会という県の内部の組織でも、各部がかかわってはいますが、具体的な事業については縦割りになってしまう。ところが、最終的にその事業を受けるのは地域ですし、そこには、農業、林業、開発…と分けられない面がありますね。最終的には総合的なかたちで、自然の力もできるだけ活用しながらということが必要と思います。 |
| 武田 |
県内各地を訪れるなかで、公共事業に関して気づかれたこともありますか。 |
| 野口 |
一つの典型的な例は、国の大規模な公共事業に対して、自分たちの地域の事情に合った、身の丈に合った、しかも必要な措置をしている下水内郡栄村です。例えば国の事業に基づくと、幅6bの立派な道路になったり、ほ場整備では10eあたり180万〜200万円かかる。その中の半分は農民負担ですから、大変です。それを、村の単独事業として「田直し事業」「道直し事業」がなされています。例えば「田直し事業」だと、村で水田の現場に詳しいオペレーター付きの機械を持った人とリースの契約をして、具体的な見取り図を書かずに、水田の持ち主とオペレーターが現場に行って、そこで打ち合わせながらやる。予算は、40万円。 |
| 武田 |
国でやる場合の5分の1。 |
| 野口 |
そうです。その40万円のうち20万円は村が補助、残り20万円は農民負担になります。これを5年間で返済する。そうすると、1年間当たり4万円。栄村では、だいたい米の値段が1俵2万円ですから、2俵分ぐらいの値段になるわけで、これなら負担に耐えられるだろうと―。 |
| 武田 |
「道直し事業」は…。 |
| 野口 |
栄村は豪雪地帯ですから、朝3時半ごろから、村で雇った除雪隊の人たちが、朝7時前までに除雪を済ませてしまう。幅3・5b〜4bの必要最小限の細い道も、村が雇った人たちが道を作っていく…。そうすると、1平方bあたり1万円でできる、ということで―。自分たちの村の予算や農民の負担から考えると、ここまでが限度ではないか、というところで知恵を出し合って、身の丈に合った小規模な事業を行っていく。それに比べると今までの国の事業は、どこでどう懐が傷むかがほとんどわからないまま、国民の税金が湯水のごとく使われてきた。国の尺度ではなく、地域の住民の必要性に応じた尺度で公共事業を見直す、ということです。 |
| 武田 |
それぞれの市町村でも、知恵を出し合えば可能ですね。そのことが地域を見直すきっかけにもなりますし、自立にもつながっていくことですね。 |
| 野口 |
今までは国の補助事業にそのまま従えば、なんとか公共事業が入ってくる、土建業をはじめ一定のお金は入る―ということでした。ただ、多くは大手のゼネコンがやっていたので、利益は東京に吸い上げられていた。地元は下請けのまた下請けという部分がありましたが、そういう時代ではなくなってきていますね。栄村では、除雪をして道ができると、そこにヘルパーなどが入り、ほ場整備とも組み合わせる―というように、村の中で循環していく、総合的に関連していく仕組みを作り上げているので、村の中で循環しますから、経済効果も非常にいい。雇用機会も増えている、ということもあります。 |
| 武田 |
非常にいいことですね。 |
| 野口 |
はい。今後、地域が独自に生きていく上での一つの教訓を与えているのではないかと思います。 |