2002年12月14日放送 

子ども未来センター 知事が凍結表明

これからはじまる「子ども未来センター」 議論を生かす 人を生かす

先月27日、長野県の田中知事は、南箕輪村に建設が予定されていた子ども未来センター(仮称)について、2006年度までの凍結を発表した。「これまでの論議に参加した県民の声はどうなるのか」「約束違反だ」「大芝高原に大きな建物はいらない」「凍結は当然のこと」など、県民からさまざまな反応が聞こえている。
巨額の投資を必要とする箱物(建物)はいらない、という主張を続けてきた伊那毎日新聞、いなまいニューススタジオは、この凍結発表の前から、子どもたちの豊かな成長のために地道な活動している個人、団体をネットワークし、有機的な活用を図ろうとインターネット版子ども未来センター(仮称)の準備を進めてきた。
田中知事も会見で明らかにしたとおり、今後は箱物ではなく、ソフト事業、カギを握るのは一人ひとりの〈人〉の、ちからとなってくるだろう。
今回のいなまいニューススタジオは、子ども未来センターのこれまでを振り返り、長野県財政の状況を踏まえながら、子ども未来センターの新たなステージについて、武田徹キャスター、吉沢記者、竹村編集長が意見を交わす。
写真:左から、武田徹キャスター、吉澤香記者、竹村浩一編集長



議論は死なない
武田 凍結という方針が出されて、今後はどのようにしていったらいいと思いますか。
竹村 計画見直し当初から、住民参加の自治の試みということで注目されてきました。一つのモデルになるのではないかと。これまで、有識者会議、拡大検討委員会と協議の段階があったわけですが、実行委員会になったところで、いきなりワーキンググループからの発表があったことなど、果たして住民とどこまで接点をもってきたのか、という問題はありました。今後は、ソフト事業について継続して検討していくということですから、本当に人、特に地元の人の知恵を集めないと、ソフト事業は成功しないんじゃないかと思います。その手法をじっくり考えてほしいです。
武田 今までやってきたことを無駄にするのではなくて、それを踏まえた上でこれからソフトの面でどうやっていくかと。建物は凍結されましたが、ソフトはまだ生かされる可能性はありますから。
竹村 そうですね。今までの議論がどうなるのか、という反応がずいぶんありますが、この議論は死なないでしょう。逆にいえば、これまで協議してきた内容が、ここで復活ということ。本来の子ども未来センターの姿が浮上してきて、ソフト事業で生かされるということで。
武田 かえっていい方向に行くのではないかということですね。
吉沢 今回の決断、手法に関しては疑問に感じるところもありました。やはり県民参加を前面に打ち出して検討を見直してきたわけなので、今までの県民の意見はどうなってしまうのかと。でも、実行委員会から出てきた「子どもの城」という案にも、これでいいのかなと感じる点があったので、ここで再び見直せる時間を持てたということは、よかったと思っています。

子どもの目線で考えなければ
武田 子どもの意見はどうでしょう。
吉沢 住民の意見交換会で、地元の南箕輪小学校6年生が「牛の乳搾り体験はどうか」「土器を作るのはどうか」などの発言をしました。その後、学級の中で討論会を行って、その時には「やっぱり何か建物がほしい」という子どももいましたが、話し合いを進めていくうちに「やっぱり建物より自然のほうが大事じゃないか」という声もあがっていました。この凍結について子どもたちと話しましたが、喜んでいた子どもたちもかなりいたようです。
武田 県議会、村の議会の反応については…。
竹村 やはり地元の活性化、地元の利益優先ということになってしまうと、子どもの世界から離れてしまっているということ。今の吉沢記者の話のように、子どもは純粋にそう考えているけれど、大人が、いろんなことが頭に入ってしまっているということがあると思います。
武田 お客さんを呼ぼうとか、そういう方面に向かいがちであると。
竹村 そうですね。子どもたちがそういう視点で見ている、ということをもっと大人が自覚して、話し合ってくれたらと。
吉沢 どうしても大人は子どもの目線にはなれない。自分たちに子ども時代があったとしても、利益優先から離れられないということを感じます。

平成14(2002)年度予算の財政構造を前提とした場合の長野県中期財政試算。平成16(2004)年度には財政赤字が280億円に達し、財政再建団体に転落するという試算となっている

ネットワークで伊那谷モデルを
竹村 税金を無駄なものに使ってほしくない、という住民の声がありました。県の財政も大変ですが、家庭の台所も大変な時代。こんな大変な中で税金を払っているんですね。それを納得できないものに使われたら怒る、そういう意識になっていますね。
吉沢 何か大きなものを作って活性化を図ろうという考えが、もう時代に合わないですね。税金で建物を造るということは、最終的には自分に降りかかってくるということを、個人個人、ちゃんと把握することも必要ですね。
竹村 これからは、伊那毎日新聞では、インターネット上にホームページを開設して、これまで、この番組で紹介させていただいた方々を中心にネットワークをつくっていきたいと考えています。未来センターのいのちとか、科学(サイエンス)とか、それに添ったものに近づけるように。取材を通じて出会ったみなさん、すでに大変貴重な、大切な活動をしている方がたくさんいます。
吉沢 知事がソフト事業を、と言っていますから、今度はソフト事業で新たな長野モデルを作っていけばいいのではと思いますね。このネットワークのように、新たな形で考えていける場ができるということは、意義のあることだと。
武田 「伊那谷モデル」と言ってもいいかもしれませんね。自然の中で、どういうふうに子どもを元気よく育てればいいか、そういうことですよね。
竹村 川や森をつないで、いろんな施設を活用すれば、おもしろいと思います。
武田 南箕輪村でもある程度施設の整備をしてきましたが、それはまた違う活用の方法を考えるということも大事ですよね。
吉沢 温泉館などありますが、子ども未来センターがなくてもかなりの人が来ています。今後は村の独自性を探っていけば、センターはなくても村の活性化は望めると思います。
武田 これまでやってきた論議、それをどうやって今後生かしていくのか、これから知恵を出し合えば、いい方向に行けるんじゃないでしょうか。
竹村 これを契機に、これをマイナスと考えず、プラスと考えて、おおいにソフトの事業を進めていってほしいと思います。

【子ども未来センター凍結について、どう思いますか】
住民インタビューより (12月2日収録)
◆「ちょっとお金がかかりすぎるような気はするが、残念は残念」(南箕輪村・50代男性)

◆「未来センターは、これから子どものために本当に作るべきかどうか、私たち自身、必要かどうかわからない。私は、必要ではないんじゃないかという感じがする。もっと、県の財政のこととか考えてやってもらいたいと思う。子どもの施設というのは、ほかにもいろいろとあるし、大芝高原で遊べるので、特に必要はないなと思ってしまっている。(予定地は)木を植えて、前のように復活させたらいいんじゃないか」(伊那市・20代女性)

◆「あんまり関心ないけれど、できるものなら作ればいいと思う。財政が苦しいというなら仕方がないか」(伊那市・70代男性)

◆「せっかく途中まで始めたものを凍結するというのは、すごく勇気がいることと思う。今のままでも、大芝は子どもたちにとって楽しい遊び場であるので、特に建物を作らなくても。自然は残してほしいし、税金を無駄なものに使ってほしくないので、建てるならしっかり考えて、いろんな人の意見を聞いて、本当に子どもたちにとって有意義なものだったらいい。(住民参加については)実際意見を持つ人がたくさんいても、言う場もなく、ごく一部の人だけの意見で今まで進んできているんじゃないかと感じる」(南箕輪村・30代女性)

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