| 武田 |
矢島さんもドイツへ行かれたのですか。 |
| 矢島 |
実際にドイツへ行き、現地でセミナーを開きました。1993年のことです。懇談会のメンバーに加え、行政の人たちも一緒に参加しました。当時の諏訪建設事務所長や県の土木課長とか。 |
| 武田 |
視察されてきたドイツの湖では、州浜(すはま)が復元されていたようですね。 |
| 矢島 |
以前はコンクリートで護岸されていた、と説明がありました。とても水がきれいで、参加者の中には思わず飲んでしまった人もいました。あまりにも澄んでいたんで、手に取って飲んでしまったのだと思います。 |
| 武田 |
この湖も、以前は水質が悪かったのですか。 |
| 矢島 |
一時期悪かったということです。 |
| 武田 |
コンクリートではなく、このような砂の州浜になると、子どもも水辺まで遊びに行けますよね。 |
| 矢島 |
人が水辺に近づけますよね。日本だと、きれいになると人が押し寄せます。しかし、ドイツでは政策できれいになった所を保護しています。 |
| 武田 |
ドイツの湖にも諏訪湖と同じく、湖畔近くに家があります。でも、何か良い雰囲気なんですよね。 |
| 矢島 |
ここには、ほとんど自動車が入ってきません。 |
| 武田 |
日本の場合だと、「車を通そう」とすぐに考えてしまう。難しいかもしれないけど、諏訪湖でも学んでほしい点ですよね。私もドイツへ行ったことがありますが、ドイツでは、子どもたちが環境教育をしっかり学んでいますよね。 |
| 矢島 |
ドイツでは学校で教えるほかに、家庭でも、ごみを出しに行く時に子どもを一緒に連れて行って、ごみの分別を教えている。そのようなことが徹底していますね。 |
| 武田 |
そしてドイツには古い建物も多い。日本は古いものをどんどん壊してしまった歴史があります。 |
| 矢島 |
現地の人とも話したのですが、想像以上に古いものを大事にしている。古い家が気に入って住みたいとなれば、空くまで待つ。2、3年もアパートに住んでいて待ってでも、住みたいという人もいまして。びっくりしました。 |
| 武田 |
日本は、とにかく新しくしましょうと、どんどん替えていく。街並みが文明的で面白くなくなった。 |
| 矢島 |
ドイツでは、良いものにはお金をかけて保存しよう、としています。 |
| 武田 |
それからドイツでは、やたらに木を切ったりしない。日本では、工事などで邪魔になるとすぐに木を切ってしまうなんてことが、平気で行われてきました。 |
| 矢島 |
諏訪湖に流れる川辺にも「すごくいいな」と思う木がありました。けど、ある日行ってみたら、木がない。そんなことが実際にありました。「あの木、切っちゃったのか」って。もったいないなぁと思いました。 |
| 武田 |
しかし、最近は、皆さんの意識も変わってきたのでは。 |
| 矢島 |
そうですね。ただ、まだ都合の良いように、知らないうちに工事や伐採がされてしまう、ということもあるように思います。 |
| 武田 |
ドイツとの交流を経て、懇談会のメンバーの意識も変わってきましたか。 |
| 矢島 |
やはり理論だけでなく、(環境先進国のドイツを)実際に見て、肌で感じられたことは違うと思う。 |
| 武田 |
ドイツへの視察には、行政の人たちも同行されたそうですが、その後、諏訪湖はどんな風に変わってきましたか。 |
| 矢島 |
帰ってきてすぐに、片倉館(諏訪市)の前で、コンクリート護岸を壊して、なぎさが復元されました。徐々にですけど、諏訪湖の周辺に木や水草も植えられてきています。芝生のような場所もでき、家族連れなどの姿も見られるようになった。以前は見られなかった光景ですね。 |
| 武田 |
かつては、湖岸がコンクリートで護岸されていたから、憩える場所もなかったということですね。 |
| 矢島 |
なかったですね。水のにおいやごみとかも見えましたから。前は近づきにくい湖だったと思う。しかし今では、だいぶ人に近づいてきた湖になりつつあるかも。湖畔を大勢の人が散歩したり、家族がお弁当を広げていたり。観光客以外の人も、目立つようになってきたことは、良いなと思います。 |
| 武田 |
地元の人たちが散歩したり、憩える場所になってきたんですね。それとともに地元では「これ以上諏訪湖を汚さない」と具体的に取り組んでいることはありますか。 |
| 矢島 |
県の呼びかけにより、アダプトプログラムというものも実施しています。湖岸を20くらいに区切って、その区間を地元の団体が責任を持って管理し、きれいにしています。行政と民間が一緒にならないと、できないことだと思います。 |
| 武田 |
諏訪湖があると、どうしても観光資源と考えがち。それも大切なんだけれど、そこに住んでいる人たちが憩えることが、これから大切だと思います。 |
| 矢島 |
昔は魚も獲れて、泳ぐこともできた。諏訪湖は生活に密着した大切なものだったと思うんですね。そこまで戻すのは難しいとは思いますが、近付いてみたい水辺、心の中を癒(いや)してくれる資源になってもらえたら、と思います。 |
| 武田 |
なくなってから気づくのではなく、あるうちに良くしよう、そんな活動が大切だと思うのですが。やっぱり未来に残したい。懇談会には若者の参加はありますか。 |
| 矢島 |
なかなか入ってきません。 |
| 武田 |
今後は若者を巻き込む方法を考えないと。 |
| 矢島 |
それが必要だと思うのですが、どうやったら良いのか。若者が目を向けてくれる魅力あるグループになるかは、とても大きな課題です。 |
| 武田 |
そして、諏訪湖に関して言えば、天竜川のことも考えないといけない。 |
| 矢島 |
天竜川流域の人たちは、諏訪湖の汚れを気にしていると思いますが、「自分たちの所が汚れている」という意識を持つことも必要なはず。諏訪の人たちが諏訪湖をきれいにすれば、天竜川は良くなる。天竜川の人たちも、「(諏訪湖の影響で)汚れている」と言っているだけではなく、その後を汚さないようにすることも大切では。それぞれが自分の住んでいる場所をきれいにしていけば、つながりも出てくると思います。 |