2002年9月28日放送 

阿部守一副知事

〜水系とダムを考える〜 いなまいテーブル
長野県財政の現状を聞く

副知事が検証する県財政 「極めて赤字体質」その危機的状況とは

長野県が抱える借金(県債)は、約1兆6千億円。返済のめどが立たない一方で、「雪だるま式」に増え続けてきた。なぜ、このような事態になったのか?危機的状況の県財政とその未来について、武田徹キャスターが阿部守一副知事に話を聞いた。

借金依存の財政運営
武田 現在の県の予算について説明してほしいんですが。
阿部 平成14(2002)年度の当初予算ですが、全体の規模は1兆47億円=図1参照=です。歳入をみると、直接長野県が県民の皆さんから頂戴している「県税」は自主財源と言い、何にでも使える財源です。地方交付税、国庫支出金は、国からもらうお金で、国がいろいろ制度を変えると、どれくらい安定的にもらえるのか、ということになります。県債はいわゆる「借金」です。
武田 将来は国の補助が少なくなる可能性がある、ということですね。
阿部 そうです。まさに、交付税と国庫支出金、そして地方税(県税)を三位一体で改革しろ、という指示が小泉内閣から出されています。一方で歳出をみると、人件費・扶助費・公債費をあわせて「義務的経費」と呼んでいます。この義務的経費は大幅な削減が簡単にはできないものなんですが、1兆円の歳出のうち約半分を占めています。財政が硬直化し、自由に弾力的に使える経費の比率が少なくなってきています。さらに、県の借入金(県債)は、急激に増え続けています=図2参照=。県債依存度(歳入全体のうち、県債発行額の割合)をみると、平成7(1995)年度をピークに若干は下がっていますが、かなり起債に依存して財政運営をしていたことが分かります。
武田 平成7年度に増えているということは、長野五輪の投資が影響していますか。
阿部 あると思います。他県では、バブル崩壊以降、投資的経費や新しい借金を抑制する動きにありますが、長野県の場合は五輪に向けてかなり、投資的経費を増やしてきた経緯があります。

【図1】歳入のうち、自主財源である県税は2割。その他は不安定な国からの補助や借金(県債)に支えられている

【図2】平成元(1989)年度に6千億円だった借金(県債)は、約10年で2.5倍以上にまで膨れ上がり、県の単年度予算を軽く超える

財政再建団体転落の可能性は?
武田 県の貯金(基金残高)はどのような状況ですか。
阿部 平成4(1992)年度の1784億円をピークに減り続け、平成13年度には697億円。急激に減らしています。
武田 今後の財政が気になりますが。
阿部 財政改革に真剣に取り組まなければなりませんが、現状の財政運営を漫然と続けた場合、どうなるのか。それを試算したのが「中期財政試算」=図3参照=です。平成13年度末に697億円あった貯金は、今年度の当初予算で333億円取り崩しています。残りは364億円。税収の状況もありますが、平成18(2006)年度には基金がなくなるのを通り越して、マイナス388億円。極めて「赤字体質」の財政構造に現状ではなっています。
武田 家計で言うと、ほとんど収入がなくて、貯金もマイナス。破産ですよね。赤字が250億円を超えると「財政再建団体」に転落しますが、そうなった場合にはどのような事がおきますか。
阿部 国が県単独で行ってきた事業の中止を求めてくる。全国一律の視点から見て「他がやっていない事を、やる余裕があるのか」という注文を付けられる可能性が非常に強くなります。我々は県民のみなさんに実態を知ってもらって、改革に協力していただきたいと思っています。

【図3】基金残高はいわゆる貯金額。現在の財政構造でいくと、来年度予算で使い果たし、赤字に転落することが分かる

甘かった公共事業の見通し
阿部 先ほども話した通り、県税収入は横ばいから下降傾向にありますが、一方で「義務的経費」は一本調子で伸びています。何としても、今の財政の体質にあわせた見直しをしなければいけない。ただ、公債費は過去の借金の返済で、今年見直しをしても、すぐ来年良くなるわけではない。義務的経費は改革しなければならない部分ですが、短期的な効果は出にくい。非常に悩ましい部分です。
武田 人件費を削れといって、すぐに職員の首を切るわけにはいきませんからね。一方で公共投資(投資的経費)の推移はどうなっていますか。
阿部 先ほど五輪の話もありましたが、公共投資は道路など施設をつくるための経費です。平成7年度にピークを迎えましたが、全国に比べその伸びは非常に高かった。五輪に向けていろいろな社会資本の整備に取り組んだ結果が、現れています。違う見方をすれば、公共投資はかなりの部分を借金で賄っていますから、これが現在ある1兆6千億円の借金残高の一つの要因になっています。
武田 五輪の影響はある意味ではやむを得ないと思いますが、借金体質を改善する考えは、当時なかったのでしょうか。
阿部 当時どのような議論がされて、投資的経費を増加したのか、私も直接は知りません。ただ結果的に、現在の財政状況になっている要因の一つに、投資的経費の伸びがあると思います。

税金の使い道を見直そう
武田 例えばダムを造る場合、国と県との予算の関係はどうなっているのでしょうか。
阿部 多目的ダムを造る時の財源=図4参照=ですが、国から50%の補助が出ます。残りの半分が県の負担になるわけですが、県負担の45%を占めるのが起債、すなわち借金です。一般財源は5%です。大まかに言うと国から半分の補助が出て残る半分の90%は借金。わずかな一般財源で大きな事業ができるわけです。経済が右肩あがりの時には良い制度だと思う。しかし、国も地方も借金体質になっているなかで、今後議論される余地があると思っています。
武田 今までは「県の負担は少なく、あとは国に依存してできるから、どんどん造りましょう」という姿勢だったわけですね。とはいっても、これらの財源は我々の税金ですよね。
阿部 米国から財源を持ってくるわけではないんですよね。あくまでも日本。国民が収めた税金でまわっているわけです。そういう意味でも事業のあり方を、冷静に一人ひとりが考えていく時期だと思います。
武田 そうすると、事業の見直しをしなければなりませんよね。
阿部 平成14年度の当初予算も非常に厳しい状況。県も事務事業を聖域なく見直さなければならないとして、取り組んできました。その結果、168事業を廃止、271事業を縮小、23事業を統合し、歳出削減の効果は約50億円になりました。引き続き見直しが必要ですが、単に事業を廃止すればよい、という事ではなく、県民にとって何が本当に必要なのか、また同じ事業でも効率化が図れないか、といった工夫をしていきます。
武田 五輪で多くのものを造りましたが、これからはもう少し我慢しなければならない状況にありますね。
阿部 今まで通りの仕事を漫然と行っていくことは、不可能な時代。県民の暮らしが良くなるためにはどういう財政にすべきか、その視点を常に忘れずに改革に取り組んでいく必要があります。
武田 県もスリム化し、コストがかからない工夫を最大限にしていかないと、県民も納得しませんよね。

【図4】国の手厚い補助がある公共事業。ただ、その財源はもともと国民の税金であることを忘れてはならない



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