2002年7月20日放送 

羽場睦美さん

問われる公共事業 かざこし子どもの森公園

30億円は高い、安い? 子どもの森公園の取り組みから

南箕輪村の大芝高原と子ども未来センターの誘致を争った飯田市の風越山麓(ふうえつさんろく)に4月、「かざこし子どもの森公園」がオープンした。総工費約30億円の都市公園。国の補助を受けてはいるが、市の一般財源からも6億円が投じられた。近くには、アスレチック施設などを備えた大きな公園が既にあり、整備自体に疑問符が残る。一方で子どもの森公園の管理運営は、民間団体の「野外教育財団」に委託された。「市民協同」をコンセプトとしており、官民一体の公園づくりをアピールする。同財団の代表で公園の参事を務める羽場睦美さんは「多額な金をかけたから無駄になるわけではない。投資が市民に還元されているかが大切」と述べ、同公園については「うまくいっている」と自信をのぞかせる。今回のいなまいニューススタジオは、同公園を訪ね、施設や市民協同の姿を検証。未来センターの在り方も探ってみた。

羽場睦美さん
81年に野外教育財団を立ち上げ。子どもの体験活動の草分け的存在として、体験プログラムの開発、キャンプ場の運営などを行う。芸術家でもあり、彫刻を中心に創作の場でも活躍している。

自然の素材を生かす
武田 緑に覆われた公園ですが、お客さんが多いそうですね。
飯田市のシンボル風越山麓に、公園は位置する。山と街、その境界に公園はある
羽場 うれしい悲鳴です。公園内の施設ではいろいろな体験ができます。例えば「おいで館」という多目的施設では、公園長の後藤道夫先生が理科実験ミュージアムという体験工房を毎週末開いています。人気がありまして、既に7千人が参加しています。
武田 この公園の施設には木が多く使われていますね。
羽場 公園にはいくつかのコンセプトがありますが、自然素材をできるだけ生かしていきたい。あの施設は昔ここにあった飯田工業高校の建物をリニューアルしたものです。
武田 ここに木の机があります。懐かしいですね。今の子どもたちはスチールなどを使って雰囲気も変わっていますが。これも木にこだわっていると。
羽場 これは廃校で捨ててしまう机を、この公園のために取っておいてリニューアルしました。
武田 これで捨てちゃうなんて、日本はもったいないことをしてるんですよねぇ。ということは、かなりこの公園にはリサイクル、再利用したものがあるんですか?
子どもたちが創作や体験できる施設が園内には6棟ある
羽場 公園内の木々ですね。もともとある木はほとんど切らないで、どうしても場所が困るところだけ、移動しました。
武田 この「かざこしなかまの館」ではイベントができる雰囲気になっていますね。4月オープンということですが、こちらでは具体的に何かされたんですか。
羽場 フォークコンサートとか、シンセサイザーのコンサートだとかありました。これは私たちの主催でやった事なんですが、それ以外にもさまざまな市民の方々が勝手に、どんどん使ってくれています。

金額がすべての答えではない
武田 よその公園とここが違うと、一番強調したいところはドコですか。
大型遊具は、子どもたちに人気。しかし、同様の遊具は、他の公園にも設置されている
羽場 基本的には都市公園ですから、どなたが来て使ってもいいと。で、特に力を入れているのは「市民協同」ということで、公である市と、一般市民、もちろん飯田市民でなくても結構なんですよ。誰でも来て、ここで楽しいことをいっぱいやっていただきたい。
武田 ところでこの公園を造るのにあたっては30億円という費用がかかっていますね。これに対して、「高過ぎじゃないか」という意見もあるようですが、そのあたりはどう考えていますか。
羽場 金額ですべての答えが出るという訳ではなくて、それをどういう風に使って、どういう風に市民の皆さんのお役に立っているか、ということで計るべきもの。ですから、モノによっては30億円かけても、結果が無駄になることはあると思います。
同じようにこの公園の建物も、造ったけれども市民の皆さんが使わない、ということになれば無駄だということになります。ところが30億円かけても、それを上回る利用やサービスができたり、憩いの場所となり市民のためになれば、30億円は安すぎたということになります。

ハートが握る成功のカギ
武田 オープンから今までは多くの人が訪れていますよね。
羽場 当初は、年間入場者を5万人と予想していました。しかし4月末にオープンして約2週間で4万人にお越しいただきまして。ほぼ、2―3週間で年間入場者予想をクリアしました。
武田 最初は物珍しくて来る人っているじゃないですか。それを持続的に来ていただく努力は、どのように考えていらっしゃいますか。
羽場 やはりそこが一番試されるところ。これからは「本当に良い」という人が来てくれると思うんですが、私たちは「市民協同」でみんなでつくっていく公園づくり、ここに力点を置いています。公園をお預かりしている私たち自身もNPOで、野外教育研究財団という法人です。ここに一つの市民協同、市があって管理運営をNPO、NGOに委託する形があります。さらに、いろんな団体に来てもらい、市民のために大いにこの公園を活用してもらう。それが私たちの大きな戦略ですね。
武田 つまり、市民の皆さんがソフトも持ち込んで、公園で何かをやってほしいと。とかく今までの公園は、完成するとそれでもうすべて終わり、という雰囲気がありました。
羽場 お金がかけてあっても、なくても、市民のいろんな欲求の受け皿になって、答えていくことが大事だと思う。私たちは公園の草刈りなどまですべてやりながら、子どもたちの興味を引き出すために、いろいろなイベントを主催者として仕掛けています。それから30を超えるボランティア団体が登録してくれています。読み聞かせ、竹細工、陶芸など、教えてくださる方々がたくさんいます。そういう指導できる方を「マイスター」、職人の親方ですね。その認定をさせていただいて活躍してもらう。おかげさまで何人ものマイスターに活躍してもらっています。
魚や貝など、近くの川や池にすむ生物が飼われ、子どもたちが目の前で観察できる
武田 今、子ども未来センターが話題になっていますが。羽場さんはどんなセンターがいいと思いますか。
羽場 ハードよりもソフト。もっと大事なのはハートですね。建物がいくら、ソフトとして何がある、といったことを紙に羅列するのではなく、大芝高原に未来センターが出来た時に、地域のために汗をかいてみんなで協力し合う。そんなハートを持った人たちが集まるということが、まず大事。
武田 建物などハードではなく、まずはハートだと。で、こちらにこういう公園ができましたから、同じようなものはいらないですよね。

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