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天竜川は、諏訪湖から遠州灘まで約213キロを流れくだる。流域は長野県、愛知県、静岡県の48市町村におよび、流域面積は約5千平方キロ、流域人口は120万人。上流域では、諏訪湖のアオコの影響や、都市部で流れ込む支流の汚濁などにより、清流とは言いにくい現状があるが、河口近くの下流域でもまた、新たな課題を抱えていた。
12月2日、浜松市で「天竜川の河川環境とダムを考える」と題した催しが開かれた。上流に建設されたダムに溜(た)められ、少しずつ下流に流され続けるヘドロ化した土砂の影響により、天竜川の生態系が狂い始めたことに危機感を抱いた天竜川漁業協同組合が主催した。
この天竜川漁協は、河口から秋葉ダムまでの約50キロの天竜川で共同漁業権免許を得ている。このあたりは天然アユの遡(そ)上が豊富で、釣りのメッカとして全国的にも知られていた。しかし、新たなダム建設により遡上が難しくなり、河床にたまったヘドロによってアユの生息も難しくなっているという。
写真:天竜川河口に広がる浜松市。人口約60万人静岡県最大の都市。写真奥が遠州灘 |
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大熊孝新潟大学教授が講演「天竜川は死んでいる」
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300人余が参加した「天竜川の河川環境とダムを考える」講演会
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この日は、新潟大学の大熊孝教授が「川とダムの功罪を考える」と題して講演。これまでのダムは、水循環のみを考えて土砂などを運ぶ物質循環については考えてこなかったと前置きした上で「川が落ち葉を運び、魚のえさとなり、その魚が川と海を行き来する。地球には生物を介した一大物質循環がある。ダムは、川の物質循環を遮断するものであり、川本来の本質に敵対するもの」と指摘した。
大熊教授によると、約2700ある日本国内のダムのうち土砂対策を施しているのは三つのみで、現在土砂を運ぶためのバイパス工事が進められている美和ダムが四つ目の土砂対策中、というのが現状。この講演会の直前に美和ダムと小渋ダムを視察したという大熊教授は、土砂でいっぱいになっているダムの現状を目の当たりにして「正直言って、天竜川は死んでいるのかな、と思わざるをえなかった」とも話した。
さらに「川は、洪水によって河床の石が洗われ、動かされることによって生息環境が一新され、変動することが前提となっている。そうやって川の生態系が更新、維持されてきた。ところがダムによって一定流量しか流れなくなり、川の機能が果たせなくなった」としてダムの功罪を指摘し「今後は、専門家に頼らず、地域コミュニティに配慮し、時を蓄積していける、人と自然にやさしい、調和した美しい空間の創出をすべき」と話した。
続いて、ダムに詳しいジャーナリスト、保屋野初子さんらをパネリストに迎えた意見交換もあり、「せいぜい数十の項目を、中には年に一回しか計らない項目もある水質や環境基準という数値に振り回されないこと。飲み水としては環境基準クリアは最低限。それ以上を考えなくては」「基準値をクリアしていても、魚は逃げる。
川は濁っている。川の人工的な土砂供給は、散弾銃で魚を撃ち殺しているようなものなのかもしれない」などの意見が出された。 |
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天竜川全域の連携が必要
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参加者のひとり、河口に近い静岡県浜北市在住、野鳥の会会員の北川捷康(かつやす)さんは、絶滅危惧(ぐ)種である野鳥コアジサシの生息状況について「河原で繁殖していたが、減少している。その理由として、中州の植物の遷移、冬季に水位が低いこと、土砂が減って中州の砂が更新されないことが考えられる」と話し、さらに天竜川下流域の河原の全域で、今年から業者による砂利採取が許可されたことなどから、今後の天竜川の自然環境、動植物の生息状況に危機感を訴えていた。
天竜川漁協がこうした催しを開くは今回が初めて。同漁協の岩野大作環境委員長は「天竜川をどう守っていくか。研究者などいろんな意識の人々と連携しながらやるしかない。来年は天竜川の濁りの解消をテーマにしていきたい」と話し、天竜川に関係するあらゆる人々の連携を呼びかけていた。
天竜川は、河口に近い流域の22市町村の生活用水、また農業用水、工業用水とも利用されている。 |
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砂浜はいのちのゆりかご
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調査員が砂浜で発見したアカウミガメの卵(今年8月12日)
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天竜川河口に産卵にやってくるアカウミガメ
天竜川河口、遠州灘の海岸線沿いに続く砂浜。ここは、毎年5月から8月までの約3カ月間、アカウミガメが産卵のために上陸することで知られている。天竜川によって運ばれた砂が流れつくこの海岸には、アカウミガメのほか絶滅危惧種である野鳥コアジサシのコロニーもあり、貴重な生き物のいのちを支え続けている。
ウミガメは、今から2億年余前から生き続けてきたとされ、現在世界に8種類が確認されている。そのうちのアカウミガメがこの砂浜にやってきている。
アカウミガメは体長1メートル20センチ、重さ100キロほど。産卵期の約3カ月間、夜遅くに砂浜に上陸し、深さ60センチほどの穴を掘って1回に100個ほどを産卵、朝方には海へ戻っていく。卵は約2カ月で孵(ふ)化し、海へ。黒潮にのって約2年がかりで赤道近くまでたどりつき、約20年後、再びこの砂浜へ産卵に訪れると言われている。
しかし、再び産卵にやってくるのは、5千匹のうち1匹程度とされ、孵化して海まで歩く間に、車のわだちにはまって動けなくなるなどして命を落とす場合も多い。 |
写真左:子ガメ放流会の様子。子どもたちの手から海へ送り出される
写真右:砂浜のいきものについて話す馬塚さん(左端)
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16年前から卵の保護活動 「サンクチュアリジャパン」
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16年前、浜松市にある自然保護活動団体サンクチュアリジャパンは、1匹のアカウミガメ産卵の確認を機に、卵の保護活動を開始した。産卵期の約3カ月間、許可を得た調査員31人が毎朝、天候に関係なく75キロの砂浜を分担して調査、産卵された卵を保護し、専用の孵化小屋に移している。
卵は、小屋の中の砂に埋められ、約2カ月で自然に孵化。調査員が海へ放流しているほか、放流会を開催し、参加した子どもたちの手から海へ送り出されている。
「カメを守りたいだけじゃない。この砂浜を守りたい。海岸を象徴する生きものに触れることによって、子どもたちの心を守りたい」とサンクチュアリジャパン代表の馬塚丈司さん。放流会のほかに自然環境観察会も開き、子どもたちにカメの生態や砂浜の植物、砂浜のなりたちなどについても話している。
サンクチュアリジャパンの呼びかけによって海岸法が改正され、自治体が条例を定めれば海岸への車の乗り入れを禁止することができるようになった。しかし、現在、禁止されているのは遠州灘海岸のうち浜松市部分のみで、隣接する砂浜では自由に車の乗り入れができる。サンクチュアリジャパンが保護活動をしている砂浜でも、車のわだちにはまって動けなくなっている親ガメに遭遇することがたびたびあるという。 |
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今年は35760個を保護
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今年の夏、サンクチュアリジャパンは、334頭の親ガメの上陸を確認、35760個の卵を保護した。一時は減少傾向にあったものの、ここ数年は増加しているという。浜松市の中田島砂丘入り口近くにあるサンクチュアリジャパンのネイチャーセンターでは、アカウミガメの生態、上陸の様子などを紹介しているほか、30枚以上のポリ袋を飲み込み、死体で漂着したカメの資料などを展示し、訪れる子どもたちなどに砂浜の自然の大切さを訴え続けている。
「人間が出したゴミをウミガメが食べて死んでしまったり、卵を盗んで売ってしまったり、せっかく産んだ卵が車につぶされてしまったり、ウミガメを取り巻く問題はたくさんある。ウミガメを通して、やさしい子どもたちを育てたい、環境にもっと配慮したかたちで生きていけるような人生を子どもたちが選ぶきっかけになってくれたら、と思う。この活動は、ウミガメを通して、人間の生活環境を考えるというもの。ウミガメはわたしたちにそれを気づかせてくれた貴重ないきもの」(馬塚さん) |
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